高齢化によって、スーパーマーケットのシニア向けサービスが次々に登場し、“憩いの場”となっている。カゴが軽い、カートが軽くて押しやすいといったハード面だけでなく、シニアの心をわし掴みにし、多くの人に喜ばれているという。
「スーパーマーケットのシニア向けサービスは、高齢化に伴って、1990年代終わり頃から少しずつ始まりました。高齢者の人口が増えていることに加え、現在のシニア層は年金をもらってゆとりのある世代。年金支給日の後に、売り上げが伸びるというデータもあり、店にとっても重要なお客様なのです」
と、ショッピングアドバイザーの今野保さんは分析する。
そんななか、大手チェーンのイオンが2013年にスタートしたのが、『グランドジェネレーションズモール』(以下、G.Gモール)という新たな店舗展開。グランドジェネレーションとは、子育てにひと段落し、そろそろ定年後の姿が見えてきた55才以上をさす。
「従来の高齢者という考えから脱却し、体力的にも金銭的にも余裕があるアクティブな世代のお客様に、満足いただけるサービスを追求したのが、G.Gモールです」(イオンコーポーレート・コミュニケーション部、以下、イオンCC部担当者)
「おいしいものを少量ずつ食べたい」というニーズに応え、総菜の少量パックを扱うのはもちろんのこと、お刺身も一切れから販売している。
「これまでのスーパーは、目的買いをするかたが主流でしたが、『G.Gモール』はカフェやカルチャーセンター、イベントステージなどを設置し、長時間滞在して楽しめるようなサービスも充実させています」(イオンCC部担当者)
単に商品を売るだけでなく、楽しさを提供する場にスーパーはシフトしつつある。そんな取り組みを10年程前から行っているのが、ダイシン百貨店だ。
「モノを売るだけでなく、お客様と深いコミュニケーションがとれる“コト”を提供できるよう心がけています」
と、ダイシン百貨店会長兼CEOの西山敷さんは話す。
具体的には、2008年から夏祭りやダンスパーティーなど数多くのイベントを開催し、地元住民や家族のコミュニケーション機能の中心となっている。今では夏祭りは2日間で2万人以上の人が訪れる、地域の名物行事だ。
「『電気、水道、ガス、ダイシン』というキャッチフレーズのもと、ペットボトル1本から無料で即日配達したり、65才以上の高齢者向けに出前弁当を500円で提供したり、配達時には安否確認なども行っています」(西山さん)
こうした地元密着型のサービスが充実しているだけあって、顔なじみの従業員と客が多く、店内では、親しそうに話をする彼らの姿が多く見受けられた。
こうしたサービスを充実させた結果、実はシニア以外の集客にも繋がっているという。
「お孫さんを連れて遊びにくる、おばあちゃんやおじいちゃんも多いですね」(西山さん)
「『G.Gモール』は、単身のビジネスパーソンや学生にも、必要な分だけ買えると好評で、シニアにやさしい店はみんなにやさしい店なんですよ」(イオンCC部担当者)
もともとはシニア向けに始まったものだが、客の立場に立ったサービスは、多くの人のニーズに合い、今や全世代の心に響いている。今後もこうしたサービスの需要は増えていくに違いない。
※女性セブン2015年3月5日号