「金沢の台所」と呼ばれる近江町市場
3月14日の北陸新幹線開業で注目を集める石川県・金沢市。兼六園や金沢21世紀美術館などの名所も多いが、ここでしか食べられない美味も魅力。そんな金沢の食文化の中心地が近江町市場だ。
「いらっしゃい、いらっしゃい」と売り子の威勢のいい掛け声が飛び交う。金沢駅から徒歩15分ほどにある同市場は、金沢旅行でぜひ訪ねたいグルメスポット。
金沢のある石川県は、能登半島が日本海に突き出た地形で海岸線が長く、新鮮な魚介の宝庫だ。また、源助だいこんや加賀太きゅうりといった加賀野菜も豊富に揃う。近江町市場には、こうした「じわもん」と呼ばれる地物の食材が一堂に集まる。
1万9279平方メートルの敷地には鮮魚店のほか飲食店も軒を連ね、店舗数は約180店に及ぶ。営業開始の9時に真っ先に訪れるのは料理人たち。午後には主婦たちで賑わい、まさに「金沢の台所」といった雰囲気だ。
加賀藩の施策で市場が開かれたのは享保6(1721)年のこと。以来、約300年にわたって地元の人々の胃袋を満たしてきた。百万石の石高を誇った加賀藩では、食材に凝った武家の饗応料理が洗練を極めた一方、昔は冬の漁が難しかったため、魚の糠漬けのような保存食も発達した。
恵まれた食材、風土や歴史が育んだ食文化が金沢には今も息づいている。
撮影■橋隅紀夫
※週刊ポスト2015年3月6日号