女子プロレスが世間を騒がせている。22日、後楽園ホールでの女子プロレス団体スターダム主催興業のメーンイベントで、王者の世IV虎(よしこ)が挑戦者の安川惡斗の顔を変形させるほど殴り続け、病院送りにしたからだ。
『1964年のジャイアント馬場』や『1993年の女子プロレス』などの著作がある作家の柳澤健さんは、この試合のニュースに接し「全女(=全日本女子プロレス)という亡霊がまだ生きていたのかと衝撃を受けました」という。
「リング上でプロレスラーが見せているものは、演技であると同時に自分自身でもあります。なかでも女子レスラーは良くも悪くも、仕事と割り切れないところがある。プロレスラーとして演じるキャラクターにのめり込み、リアルな感情と一体になりやすいんです。
一体化するほど魅力的なレスラーになりますが、同時に本来の自分を見失い、リング上のキャラクターから戻れなくなる怖い面も持っています。かつて全女はレスラーの感情のもつれ、嫉妬や憎しみを積極的に試合に反映させていました。女の子の感情を動かすことによって客を動かすという発想だったんです。
たとえば、売り出し中の若手に嫉妬したベテランが制裁を加え大ケガをさせたことは何度かありました。それを見て、お客さんは人間関係を想像した。でも、2005年に団体が消滅すると危険すぎる試合はなくなっていたんです」