今年GWには映画も公開されるベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴・著)。「ビリギャル」こと小林さやかさん(26才)が育ったのは、両親が不仲で、もはや離婚もやむなし、子供たちは傷つき荒れていく──そんな崩壊寸前の家庭だった。しかし、今は違う。両親は夫婦仲がよく、さやかさんも結婚し、共に幸せな家庭を築いている。母娘が、今だから話せる壮絶な日々とそこから得られた子育て法を明かした。
「ああちゃん」「さやちゃん」と呼び合う仲よし母娘。だが、娘が大学に合格するまで、夫婦関係は穏やかではなかった。
母の橘こころさん(50才)は、しつけの厳しい母親の元で育った。しかもその母は、美貌や高学歴に恵まれながら金遣いが荒い自分の姉ときょうだいになけなしの金を無心され続けて、一時も心身の休まるときはなかった。そんな恐怖の中、叱られて育ったことで、こころさんは悲観的になり、自分のことを“ダメ人間”だと考えるようになる。
1987年に夫(52才)と結婚、3人の子の母となったが、長女さやかさんの誕生後すぐに起業した夫は、家庭を顧みなくなり、価値観の違いから夫婦仲がギクシャクし出す。
その結果、さやかさんも長男(24才)も生活が荒れていく。ことに中学生になったさやかさんは、成績は学年ビリ、たばこにも手を出し、学校の校長に“人間のクズ”と呼ばれてしまう──。
そんな生い立ちから、夫婦の確執、子供たちの危うさまで、こころさんが赤裸々に綴ったのが『ダメ親と呼ばれても学年ビリの3人の子を信じてどん底家族を再生させた母の話』。『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』に続く“ビリギャル”シリーズの第2弾となる。2人が過去の家族について語り合った。
母:幼い頃のあなたは、ナイーブなところがすごくあって、誰かがけんかをしていることで自分が傷ついたり、先生が大きい声で誰かを怒鳴っていると怯えてしまう。仲よしグループのリーダーみたいな子が誰かに意地悪するようなことがあると、すごいショックを受けてしまう。といって、その子を正す勇気もないし、結局、自分が傷ついて、どうしよう、どうしようってなっていた。私は、その優しさや思いやりをどういう方向に伸ばしていこうかなって考えていたのよ。
娘:ちゃんと見ていてくれたんだね。
母:優しくてかわいくていい子であれば嬉しいけど、それを手放しで喜ぶだけで世の中を渡っていけるかというと、そうじゃないでしょ? もっと必要なものがあるのではないか、もっと幸せをしっかりとつかめるような子になってほしいという思いが常にあったの。
学校や友達との人間関係で傷ついたさやかさんは、登校を渋ることもあったという。しかし──。
母:「行きなさい」と言って、無理やり行かせる親の気持ちもよくわかるし、それを否定するつもりはないの。でも、私は自分がダメ人間だったから、学校へ行くのがすごくつらかったし、面白くなかったので、気持ちがすごい理解できたのね。
娘:それが、私にはとっても嬉しかった。
母:私は、「楽しいことをしていると親に叱られる」と思って育って、自分が何をしたいかわからなくなり、現実逃避の空想ばかりする人間になったの。だから、あなたたちには自分が本当に楽しいと思うことだけさせたかった。だから、あなたたちの「人生への意欲」が大きく育ったと思っている。ただ、肝心の私たち夫婦の間がギクシャクしていたことを見落としていたのね。
娘:…(無言でうなずく)。
母:そのときの私は、子供たちの前ではけんかを見せないように努力してたつもりなの。でも、そんなのはまったく無駄で、壁の向こうの部屋にいても、怒りとか夫婦のいざこざっていうのは、信じられないぐらいの力であなたたちを傷つけていたと思うの。それが、学校で何でもないことに怯えたり傷つくことにもつながっていたのね。
娘:そうね。私にとっては、物心ついたときに、ふたりの不仲はなんとなくわかっていた。もうちょっと大きくなって、ああちゃんの話し相手になってあげられるようになると、パパへの怒りや憎しみが、話しぶりから伝わってくる。次第に、私にはパパが悪者にしか見えなくなってきちゃって、ああちゃんをいじめる悪いやつっていうふうに見てしまう。で、ああちゃんがそんなにつらいんだったら、私は「離れて暮らしたほうがいいと思うよ」って言ったよね。
母:さやちゃんが中学生の頃ね。
娘:そう…。「無理して一緒にいることはないから、あんなやつとは離婚しろ」みたいなことを(笑い)。だって、ああちゃんが『離婚裁判に勝つ方法』という本や、離婚届を持っているのも知っているし。私たちのことを思って無理して一緒にいることない、って思っていた。
母:離婚届なんか見てないでしょ?
娘:ううん、私は勝手に見ていた。
母:そうだったの…(絶句)。まだ小さかった妹も、夫婦の仲が険悪になると、わざとおどけて見せてくれたり、みんなわかっていたのね。
※女性セブン2015年3月12日号