巨人の4連覇を止めるのはどこか――。今年のセ・リーグは、混戦になりそうだ。盛り上がっているのは、広島カープだ。メジャーから8年ぶりに黒田博樹が復帰。キャンプ中は黒田フィーバーともいえる盛り上がりを見せ、24年ぶりとなる優勝も俄然現実味を帯びてきている。
昨年は2位に終わったものの、クライマックスシリーズで巨人を倒し日本シリーズへとコマを進めた阪神はどうか。今春のキャンプでは、OBの江夏豊氏が臨時コーチに就任。引退後初となる古巣への復帰が話題となった。スポーツ紙記者が話す。
「キャンプ中はネタを探すのに苦労します。特に阪神は人気球団なので、毎日なにかしらの記事を作らないといけない。とはいえ、今年は話題性のある新戦力もほとんどいない。そんなとき江夏さんのような大物がいてくれると、非常に助かるんですよ」
たしかに、キャンプ中の記事を見ると、〈阪神・藤浪 江夏氏の辛口エールにも動じず エースの自覚〉などのように、主力選手を江夏氏に絡めた記事が多々見受けられた。球界関係者は、江夏氏の臨時コーチ就任をこう見る。
「臨時コーチの存在が戦力を左右するというのは相当難しいですし、例もほとんどない。意地悪く見れば、単なる話題作りという見方もある。
だが、別の大きな効用がある。阪神の場合、紅白戦で若手がホームランを打っただけで、大きく取り上げられ、すぐに持ち上げられる傾向にある。すると、周りからチヤホヤされ、勘違いしてしまう選手がこれまで少なくなかった。しかし、昨年の掛布(雅之)さんに続き、今年は江夏さんと超大物がキャンプに現れた。
そのため、これまでと比べると、必要以上に若手が大きく扱われる機会がかなり減った。いわば、掛布さんや江夏さんがコーチになったことで、若手にとっては練習に没頭できる環境ができたんです。和田豊監督も、マスコミ対応の負担が減り、選手を見ることに集中できる。いわば、大物OBが“防波堤”の役割を果たしているんです」
一昨年秋に掛布氏がゼネラルマネジャー付育成&打撃コーディネーター(DC)に就任すると、スポーツ紙はこぞって掛布氏の話題を取り上げた。その“防波堤”効果があったのか、昨年の阪神は、5年目の上本博紀がセカンドの定位置を奪取し、ルーキーの梅野隆太郎が新人捕手ながら92試合にも出場。毎年、若手の伸び悩みを指摘されてきた阪神にとって、画期的な年となった。
「高卒5年目の岩本輝はフォークのキレも良く、今年大化けする可能性を秘めています。また、昨年低迷した高卒4年目の松田遼馬の復活も期待されています」
今年は、江夏氏を“防波堤”とした若手投手の台頭があるかもしれない。