緊迫した試合を一瞬にして終わらせるサヨナラゲームは、この上なくドラマチックで、どうしようもないほど残酷だ。ファンの心に残るサヨナラの瞬間を切り取った名場面の数々を、「被害者」である投手の表情を通して振り返る。
週刊ポスト増刊『プロ野球&甲子園 甦る伝説』では、20試合の印象深いサヨナラゲームを、その場に関わった選手らの証言とともに紹介しているが、その中から5試合を紹介しよう。
【1959.6.25】天覧試合タイムリミット間際の劇的弾
巨人-阪神の天覧試合で長嶋茂雄がレフトスタンドへ本塁打を打ち込んだ瞬間。マウンド上の村山実は生涯「あれはファウルだ」と主張し続けた。
【1971.10.15】サブマリンを沈めた世界の本塁打王
巨人-阪急の日本シリーズ第3戦で、絶不調だった王貞治が9回に山田久志からサヨナラ3ラン。ここまで完封していた山田は膝から崩れ落ちた。
【1987.9.20】怪物に引退を決意させた後輩の一撃
巨人・江川卓が法大の後輩、広島・小早川毅彦にサヨナラ弾を浴び、人目を憚らず涙を見せた。プロ9年目で2本目のサヨナラ被弾で怪物は引退を決めた。
【1993.6.9】黄金ルーキーは150球目に泣いた
高速スライダーを武器に巨人打線から16奪三振。しかし150球目を巨人・篠塚和典にとらえられた。試合後、伊藤智仁は涙を流し報道陣の質問に沈黙した。
【2006.10.12】完璧だったエースに襲いかかった悲劇
ソフトバンク―日本ハムのプレーオフ第2ステージ、2試合で防御率1.08ながら、いずれも0-1で完投敗戦した斉藤和巳。最後の瞬間は1人では立てず、チームメートに抱えられながらマウンドを降りた。
※週刊ポスト2015年3月6日号