米カリフォルニア州のキャンプ・ペンデルトン。16両の水陸両用装甲車「AAV7」が海面に姿を見せた。キャタピラの爆音とともに岸に乗り上げ、後部ハッチからは自衛隊西部方面普通科連隊の隊員が飛び出してきた。
2月25日まで1か月にわたり行なわれた陸上自衛隊とアメリカ海兵隊の合同軍事演習のひとコマだ。
「AAV7」──自衛隊の離島奪還作戦の核となる水陸両用装甲車だ。隊員を海上から輸送するのが主な目的で、今後5年以内に52両の導入が予定されているのだが、その推定総額は442億円。
2015年度から本格的な導入が進められ、2017年度までに編成する米海兵隊をモデルにした新たな水陸機動団に配備される。最高時速は海上で時速13km、陸上で時速72km。敵に気づかれても上陸を強行できる。1両で25人の隊員を輸送可能だ。はたして「AAV7」は、尖閣諸島などを守る「切り札」となるのか。
「水陸両用車の必要性は認めますが、米軍が100万ドル(約1.2億円)で購入している車両を日本は8.5億円で買っています。しかも40年以上も前に開発された車両がベースで、米海兵隊は1980年代から後継車両の開発を訴えているほどの古さです」(取材したフォトジャーナリスト・笹川英夫氏)
また、水陸両用といっても距離航続が短く、離島沖までは「AAV7」を運ぶための艦船も必要となる。442億円が「良い買い物」と評価される時は来るのだろうか。
撮影■笹川英夫
※週刊ポスト2015年3月13日号