“個人情報”に過敏な時代になってからというものの、テレビや雑誌、DVDなどでは有名人の周りに写っている一般人の顔にモザイクがかけられる場面が目立つようになっている。必要以上にモザイクを施し、違和感の残るケースも多々ある。なぜ、それほどまでに気を遣うのだろうか。テレビ局関係者が話す。
「昔は特に許可を取らないで、そのまま放送し、不倫カップルの密会がバレたなんてこともあったようです。たしかに、ある程度は配慮すべきだとは思いますが、今はあまりに過敏になり過ぎている。本来、モザイクは映ってはいけないものに対し、処理する道具なのに、なんでもかんでもかけてしまう。ロケでせっかく綺麗な景色が映っていても、周りの人がモザイクで映ると、映像の価値は確実に下がるし、悪いところにいるような感覚に陥りますよね」
モザイクが作品の面白さを損ねるケースは確実にあるだろう。太川陽介と蛭子能収が珍道中を繰り広げる『ローカル路線バスの旅』(テレビ東京系)は、“人情ふれあい旅”という副題が付く回もあるほど、一般人との交流がキーポイントの番組だ。本放送では滅多にないが、DVDではモザイクがかけられたり、一般人との触れ合いがかなりカットされたりしている。放送作家が話す。
「モザイク処理は、自主規制の面が大きい。たとえば、『ザ・ベストテン』(TBS系)のDVDでは、一般人にモザイクはかけられず、普通に映っています。当時の人に確認するのは、まず無理な話。正直、モザイクをかけることで違和感が生まれれば、番組の価値が下がります。何でもかんでもモザイクをかける風潮は如何なものかと思いますね。
今のメディア界は、モザイクをかけられないで怒る人のことばかりに気を取られています。でも、逆に『俺は犯罪者じゃないのに、なんでモザイクをかけるんだ!』と怒る人だっていますよ」
黙っている多数派は無視し、少数派の意見を必要以上に警戒する風潮は、何の罪もない人をモザイク処理する奇妙な弊害を生んでいる。