2月20日夜、東京・六本木のテレビ朝日に隣接する高級ホテルの宴会場は同局の社員たちでごった返していた。この日は、昨年60歳を迎えた同局アナウンサーの渡辺宣嗣、吉澤一彦、宮嶋泰子の3氏の定年を労うパーティが開かれ、下平さやかアナをはじめ、大下容子アナ、宇賀なつみアナら人気女子アナたちの姿もあった。
会が最も盛り上がったのは乾杯が終わってから約30分が過ぎた頃。会場にけたたましい音量の音楽が流れる。
「イノキ、ボンバイエ! イノキ、ボンバイエ!!」
流れたのは燃える闘魂・アントニオ猪木の入場テーマ。そして80人近くの出席者の視線が集まる入り口から登場したのは、同局の看板番組「報道ステーション」のメインキャスターを務める古舘伊知郎(60)だった。
実は古舘はこの会の主役の3人とは1977年のテレ朝同期入社。自身は1984年に退社してフリーとなったが、かつて苦労を分かち合った「同期の桜」を祝うべく、「報ステ」の本番直前の忙しい合間を縫って駆けつけたのだ。
ど派手な登場後は、マイクを握って同期との思い出話に華を咲かす。気心知れた間柄でトークは絶好調。アトランタ五輪で女性アナとして初めてマラソンの実況を務めた宮嶋氏を、
「あの時はアトランタが舞台だからって、実況で“風と共に去りぬの~”なんて調子のいいことをいってたよねェ(笑い)」
とイジリ倒すなど、軽妙なトークで何度も会場の爆笑を誘った。出席したテレ朝社員が語る。
「入場テーマといい、その後のボキャブラリー豊富なトークといい、この日の古舘さんは『報ステの古舘』ではなく、『プロレス実況の古舘』に戻っていました。笑顔が絶えず、喋りも軽快。深刻そうな表情で言葉を選びながら話す『報ステ』の時より、はるかに生き生きして見えました」
“即席トークショー”からしばらくすると、司会から「本番まで時間がありません!」と促され、会場の拍手を浴び古舘は満面の笑顔のままテレ朝に戻っていった。
川内原発報道の事実誤認でBPOの審議対象となったり、安倍首相の中東訪問に関する報道で外務省から訂正要求を受けたりと、ここのところトラブル続きの報ステ。さらにコメンテーターやプロデューサーの交代など、古舘には逆風が吹き荒れる中、「アナウンサーの原点」に戻れる場は何よりも嬉しかったのか。やっぱり古舘には報ステのスタジオよりリングサイドが似合う?
※週刊ポスト2015年3月13日号