「ようござんすね? このまま戦争で」──日本の言論空間を一変させたベストセラー『戦争論』から17年、小林よしのり氏が改めて世に問うた『新戦争論1』(幻冬舎刊)が話題を呼んでいる。かつて『戦争論』で「戦争に行きますか? それとも日本人やめますか?」と問うた小林氏は、今作では一転して戦争に向かおうとしている現在の日本の空気に疑問を呈している。その意図を小林氏が語る。
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わしは『新戦争論1』のなかで、「そろそろ戦争(やり)たいんじゃないか?」と挑発した。
今回の人質事件を受けて、ネットなどでは「イスラム国にやり返せ」という声が高まっているし、首相の安倍も「罪を償わせる」と過激な物言いをした。日本人のなかに戦争を求めるムードがあるのは確かだろう。しかし、果たしていまの日本人にイスラム国と本気で戦争するだけの覚悟はあるのか。
罪を償わせるというのは、普通に考えれば軍事的に報復するということを指す。しかしこの場合、実際に戦うのはヨルダンであり、アメリカではないか。日本はただそうした国々にお金を出すだけ。お金を出して復讐するなんて、それはもはや『おぼっちゃまくん』と同じである。結局、国内の安全圏で物を言ってるだけだ。
それは好戦的なネトウヨたちにしても同じことだ。経済的にも社会的にも閉塞感を抱えた若者層が、「祭りがほしい」と戦争を求めている。実はそれは、欧米社会での疎外感からイスラム国を目指す若者と同質である。イスラム国も日本のネトウヨも、もとを正せばアメリカが生んだグローバリズムの「影」なのだ。自らが生んだ影と戦うのだから、アメリカにとって対イスラム国の戦争が難しいのは当然である。
ただし、ネトウヨにはイスラム国に行く勇気もイスラム国と戦う覚悟もない。リスクが少ないところで大騒ぎしている、ただの野次馬でしかない。いつから日本人はこんなに弱くなったのか。
※SAPIO2015年4月号