飛ぶ鳥を落とす勢いだったサムスンが青息吐息だ。昨年末、電子書籍サービスや光ファイバー事業などから相次いで撤退し、ついには英サッカー・プレミアリーグの名門チーム「チェルシー」のユニフォームからも“撤退”したことが、「韓国の巨人」の落日を如実に物語っている。
サムスンは2005年、チェルシーとスポンサー契約を結び、ユニフォームの胸に社名のロゴマークを入れた。それ以降、チェルシーの活躍に引っ張られるように、欧州市場でのシェアを急拡大していく。
2005~2006年シーズン、チェルシーがリーグ優勝を遂げると、サムスンもイギリスでの携帯電話の売り上げを前年比で7割伸ばし、液晶テレビ販売台数も欧州でシェア1位に躍り出た。2011年の欧州での売り上げは2004年の3倍にまで跳ね上がる。そして2013年、米アップルを抜いて、スマホシェア世界第1位になった。
ところがその後、売り上げの7割を占めていたスマホ事業が急失速する。2014年12月期のスマホ関連部門の営業利益は前年比で42%ダウン。全社の営業利益も前年の3兆6000億円から2兆5000億円へと1兆円以上も下落した。本誌前々号(3月6日号)では、苦境のサムスンが東京・六本木にある自社ビルを明け渡すことをスクープした。
スポーツ部門も経営不振の煽りを受けた。20年以上続いた同社ラグビー部やサムスン証券のテニス部は解散。そして欧州での躍進の象徴だったチェルシーとの契約解除にも踏み切った。
悲壮感漂うサムスンを横目に、2月26日、チェルシーとのスポンサー契約が明らかになったのは日本のタイヤメーカー大手「横浜ゴム」だった。
横浜ゴムの2014年12月期決算は営業利益・純利益とも3年連続で過去最高を更新。なかでも海外での売り上げが伸びており、半分は海外で稼いでいる。チェルシーとの契約の内情を知る広告代理店関係者が明かす。
「昨年12月頃、チェルシーサイドから横浜ゴムに“スポンサー契約しないか”という話が持ちかけられた。年間契約額は60億~70億円程度と巨額。それでも、ユニフォームの胸にロゴを入れるだけでなく、ホームスタジアムの広告や自社のCMにチェルシーの選手を自由に起用できるなど包括的な契約なので、欧州や北米、アジアなどグローバルな事業展開を目指す横浜ゴムとしてはプレミアの強豪チームとのパートナーシップは割に合うと判断したようだ」
ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル……とタイヤ業界には強豪が居並ぶ。今季プレミアリーグで首位をひた走るチェルシーとともに横浜ゴムも成長ロードを走れるか。
※週刊ポスト2015年3月20日号