妻と死別した男性や、離婚した高齢男性と結婚し、多額の保険金や遺産を受け取る女性を“後妻業”と呼ぶという。男性の寂しさにつけこんで、財産を手に入れるわけだが、必ずしも犯罪というわけではない。小説『後妻業』(文藝春秋刊)の著者で直木賞作家の黒川博行さんはこう話す。
「グレーなケースは山のようにあるはずです。高齢の夫が亡くなっても、その死の不自然さを疑う人はいません。例えば高齢者が明確な死因がわからない状況で死んだ場合、警察はほとんど事故死、病死として処理してしまう」
日本の解剖率はわずか10%にも満たないことが政府の調査で明らかになっている(自由民主党政務調査会による調査)。超高齢社会に突入した日本では、「今後、後妻業はますます活発になる」と黒川さんは続ける。
「老人が増えれば後妻業が盛んになるのは容易に予測できます。後妻業が狙うのは金だけじゃありません。その人が持っている地位や名声、人脈などが狙われる場合もある。後妻業にはパターンがあるんです。まずは家財道具を夫の家に移し、住民票を移して、地域自治会の会合などに顔を出す。夫の妻であることを周囲にアピールし、すんなりと妻の座に納まるのが手口です」
気をつけていても男はハマってしまう後妻業の罠。一方、夫に先立たれてしまった高齢女性は大丈夫なのか。
「女性は非常に用心深いですし、男と違って“自分の子供にお金を残したい”と思うから後妻業の逆パターンというのはあまり聞かないですね。ただし、その子供への愛情につけこまれてオレオレ詐欺にひっかかる女性は多い。“息子”から助けてくれと電話で泣きつかれると騙されてしまうんです。今後、どちらもどんどん増えていくんじゃないですか」(黒川さん)
高齢者の孤独につけこむ“闇の職業”。子供たちが頻繁に連絡を取ることが唯一の手立てなのかもしれない。
※女性セブン2015年3月19日号