中国では3月3日に中国人民政治協商会議(政協)、5日に全国人民代表大会(全人代)が始まった。この2大会の委員は日本で言えば、さしずめ国会議員に相当する。政協は参議院で、全人代は衆議院に相当するが、これらの委員の36人が中国の長者番付上位100人に入っていることが分かった。ネット上では「中国で、企業が成功するには官との癒着の絶対条件であることを如実に示している」との声が出ている。
この長者番付は毎年、上海の民間調査会社が実施しているもので、「胡潤百富」として知られている。
昨年の長者番付によると、上位100人のなかに入っているのは全人代委員が15人、政協委員は21人。これら36人の財産の合計は1兆2000億元(約22兆8000億円)で、昨年の中国の国防予算が8082億元だったので、その1.5倍程度と莫大な額になった。
36人中、女性は3人で、中国社会が男性優位であることを物語っている。年齢別では、一番多いのが40代から50代の1960年代生まれで17人。1950年代生まれが11人、1940年代が6人。1970年代以降の生まれはわずか2人で、いずれもIT関連企業の創業者だ。
業種別で見ると、不動産関連が一番多く14人で、他は各業種に広がっている。
資産別では1000億元(約1兆9000億円)を超えるのが4人で、太陽電池などエネルギー関連企業会長の李河君・漢能集団会長、食品関連の宗慶後・ワハハ集団会長、IT関連の馬化騰・テンセント会長と李彦宏・百度会長などとなっている。
中国では全人代も政協も党・政府の方針に無条件で賛成する「ゴム版」大会と呼ばれており、議題の審議は形だけで、委員も党や政府の幹部以外は功成り名を遂げた人物が選ばれている。官から選ばれることもあって、官との癒着も相当進んでいるというのは常識だ。
香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は「36人の財産を合わせた1兆2000億元は、ベトナムの国内総生産(GDP)1兆693億元よりも多い。これは、中国では富の偏重が極度に進んでいることを示しており、極めて異常だ」と指摘している。
ちなみに、米経済誌フォーブスが3月3日に発表した日本の長者番付第1位はソフトバンクの孫正義・会長で、184億ドル(当時のレートで、1兆8700億円)だった。