東日本大震災から4年。いまも津波に襲われた街では瓦礫を撤去しただけの更地が広がっている。電気もガスも上下水道も復旧していない地域は多い。災害公営住宅の建設も遅々として進んでいない。なぜそんな状況が放置されているのか。
新聞・テレビでは「アベノミクス好況で都心部の再開発やマンション建設ラッシュに建設作業員が流れ、さらに、東京五輪特需で施設の整備にマンパワーが割かれていて、被災地が人手不足だ」などと、“景気が良いから仕方ない”といわんばかりの説明を繰り返している。復興の遅れは「失政」ではないといいたいのだろうが、それは嘘だ。
三陸の海岸沿いを歩くとよくわかる。津波で無残にも破壊されたはずの堤防が、真新しいコンクリートによってさらに大きなスケールで作り替えられていた。被災地でいま一番進んでいる工事は「防潮堤」である。
国は震災から時を待たず、岩手・宮城・福島3県の沿岸を総延長400キロメートル近くにわたってコンクリートで覆う“万里の堤防”計画をぶち上げた。総事業費約8500億円の巨大公共事業だ。
建設には各地の住民から疑問の声が上がってきた。たとえば高さ14.7メートルの防潮堤が建設される宮城・気仙沼市本吉町小泉地区では、街全体を高台に移設するので海岸沿いの平地に住民はいない。松島湾のある無人島は“農地保護”を名目に約20億円をかけて防潮堤で囲まれる計画だ。一体、何を守るための堤防なのか。
しかも、新しい防潮堤がいくら巨大でも東日本大震災レベルの津波がきたら止めることはできない。いかに早く避難するか、あるいは初めから危険な低い土地に住まないなど、他の手段によって対処すべきなのだ。
それでも、ひとたび巨大防潮堤計画が動き出せば、政治家や役人、ゼネコン、マリコンに巨大な利権が発生する。しかも、「防災に不可欠だ」といえば予算はつけやすい。
公営住宅は計画が遅れていても、防潮堤計画は急ピッチで進む。国は被災者の生活再建よりもコンクリート事業を優先しているのだ。
※週刊ポスト2015年3月20日号