あれから4年──東日本大震災の被災地では、今も重機の音が絶えない。沿岸の復旧工事は計画の約73%が着工し、景観は一変した。道路や鉄道の復旧は徐々に進み、インフラは整いつつある。だが、公立の小・中学校を中心とした教育現場の復興は遅々として進まない。
被災地の児童の肥満出現率は全国平均より高く、小学生男子の全国平均10%に対し、岩手では14.6%、宮城でも13.6%に及ぶ。理由のひとつに校庭に仮設住宅が建ち並び、子供たちが運動するための十分なスペースが確保できないことが指摘される。
震災直後、小中高校合わせて宮城では29校、岩手では32校の校庭に仮設住宅が建てられたが、完全撤去されたのは今年1月の岩手・宮古市、田老第三小学校1校だけだ。
問題は校庭だけではない。震災によって被災地の児童生徒数は急激に減少、校舎の損壊も相まって多くの小中学校は統廃合を余儀なくされた。福島・相馬市の仮設住宅で、祖母を含めた3世代5人で暮らす一家の母親が語る。
「子供たちはスクールバスで45分かけて通っています。バスの時間が決まっているので、友達と遊ぶことができず、家に帰れば部屋は狭い。壁が薄いので騒げませんし、おばあちゃんが早く寝るので電気を消さねばならず、勉強もままなりません。窮屈な思いをしているけど、どうしようもないんです」
環境が激変した子供たちのストレスは計り知れない。宮城の中学生の不登校の割合は、平成25、26年と2年連続で全国ワーストを記録。高校卒業者の進学率も、被災地3県は全国平均を下回る。
一方、教職員やボランティア、地元の人々が知恵を出し合い、「教育の復興」の手伝いをしようという取り組みも見られる。そのひとつが、岩手・山田町のNPOこども福祉研究所が開設した「山田町ゾンタハウス」。無料で利用できる自習室には今でも日に50人以上の子供が訪れる。
「震災後、子供たちが大切にしていたのは、『いつもの学校の友達と今まで通りの生活をする』という“日常”でした。学校でも家庭でもないこの場所で、そうした時間が過ごせていると思います。育ち盛りですからね、お腹が空いたときに食べられるおやつも無料で用意しています」(佐藤恵理子さん)
安倍晋三首相は「復興は新たなステージに移りつつある」と胸を張るが、被災地の教育現場には今も厳しい現実が突きつけられている──。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2015年3月20日号