3月13日の運行を最後に引退するブルートレイン『北斗星』。誕生から27年、東京・上野駅と北海道・札幌駅を往復する青く美しい寝台特急に、北海道出身の新党大地代表・鈴木宗男氏(67)が乗車した。
「いやー懐かしい、この『北斗星』はね、1988年の青函トンネル開通に合わせて運行を始めたんですよ。その時私は40歳。自民党の交通部会長代理という立場で函館からの一番列車のテープカットをしました」
上野駅19時少し前、鈴木氏は意気揚々と列車に乗り込んだ。鈴木氏も若い頃は随分と夜行列車に世話になったという。
「私が初めて一人で東京に行ったのは1966年だった。大学受験のために青函連絡船で青森まで行って、そこから夜行で12時間。寝台車は高かったから、普通車に座ったままあまり眠れなかったな(笑い)」
ブルートレインの歴史は1958年登場の寝台特急『あさかぜ』に遡る。高度成長期の新たな憧れとして人気を集め、1970年代半ばのピーク時には1日30本以上が運行されていたが、その後は除々に本数を減らしていく。
最後のブルートレイン『北斗星』の引退発表以来、乗車券はプラチナチケットになった。思い出を噛みしめるように車内を巡る鈴木氏はロビーカーで出会った乗客とすぐに打ち解け、持参したワインを振る舞い乾杯の音頭を取った。
「旅は道連れ世は情け、こういった旅の味わいがまたひとつ減ると思うと寂しいね」
2段ベッドが2つ並ぶB寝台に戻ると、22時に消灯。『北斗星』は青森駅に停車すると、青函トンネルを通過するため、先頭の機関車が赤のED79形に交替した。暗闇の青函トンネルを抜けると夜明けは間近だ。
6時30分すぎ、函館駅に到着。多くの乗客がホームに降り立つ。電気機関車からDD51形ディーゼル機関車への交換作業を見るためだ。
再び青の機関車に姿を変え、冬景色の北の大地を疾走する『北斗星』。車窓から朝日が差す頃には、車内販売のワゴンが回ってきた。鈴木氏はかに飯弁当に舌鼓を打ち、食後は淹れたてのコーヒーを飲みながら、長い間、静かに外の景色を眺めた。
「北海道は四季折々の風景がどれも本当に美しい。こういった自然に触れることができる列車の旅は今後も残していくべきかもしれないな」
11時15分、列車は札幌駅に時刻通りに到着した。
「8月までは臨時列車が運行されるというから、一度妻を乗せてやりたいなぁ」
札幌駅のホームで鈴木氏は青い車両を再び眺めた。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2015年3月20日号