起業といえば、一旗揚げてやろうと意気込む若い世代のイメージが強いが、実はシニア起業家のほうがはるかに多い。
中小企業白書(2014年版)によれば、60歳以上の起業家の割合は、20年ほど前は14.2%だったが、2002年に24.6%、2012年には32.4%に増加した。この数字は30代の23.6%を大きく上回る。
しかし、起業のハードルは決して低くない。事業が失敗したらどうなるのか、多額の債務を抱えることになるのではないかといった恐怖心や、会社設立の手続きや初期費用、販路の確立をどうすればいいのかといった不安もある。
起業家のためのレンタルオフィスを運営し、起業準備から設立後の運営支援までサポートする「銀座セカンドライフ」代表の片桐実央氏が解説する。
「シニア層の起業における成功のポイントは『3つの円』の重なりをビジネスにすることです。趣味などの『好きなこと(やりたいこと)』、会社員時代の経験や仕事で賞状をもらったなどの『得意なこと』、そして商品を欲しがるお客さんやニーズがあるかという『市場性』。この3つが重なる領域を見つけるのがポイントです」
実際に「シニア起業」に踏み出した人の体験談を聞こう。サラリーマン時代に玩具メーカーで商品開発に携わってきた服部真氏(57)の体験を紹介しよう。
玩具メーカー大手「バンダイ」でラジコンやゲームの企画開発を担当、その後転職先の雑貨メーカーでパーティーグッズなどの商品を企画開発してきたアイディアマン。
雑貨関連会社で役員をしていた56歳の時、社員の若返りを図る会社の方針もあったことから退職し、昨年2月にランニングなどスポーツ関連グッズを販売する会社「ランビー」を設立した。
「会社設立から1年が経ちました。自分で考えたオリジナル商品を世に出して、ようやく種まきができたかな、という感じですね」
服部氏の顔は充実感に溢れている。
※週刊ポスト2015年3月20日号