しかし、日本は全く違う。長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が1%台になっても、利用者はいっこうに増えていない。自動車ローンの金利は2%前後だが、2014年の新車販売台数は消費増税前の駆け込み需要に支えられて556万台と前年より3.5%増加したものの、車両価格も維持費も安い軽自動車の占める割合が1968年の統計開始以来初めて4割を超えた。

 アメリカの住宅ローンや自動車ローンの金利は、プライム(信用度が高い消費者)向けローンでも4%台である。普通の国では金利が5%以下になったら借り手が殺到するが、日本ではいくら金利が低くなっても借りてくれないのだ。その理由は、私が以前から指摘しているように、日本が世界に類のない「低欲望社会」になったからである。

 そうした日本の「低欲望社会」について、おそらくミアン教授らは全く理解できないと思う。

 皮肉を込めて言えば、『21世紀の資本』も『ハウス・オブ・デット』も、日本が世界に類のない異常な状況になっていることを浮き彫りにしたという意味では価値がある。この「低欲望社会」を理解し、それに対する正しい処方箋(「坂の上の雲」を見上げながら野心を滾らせていた頃の日本への回帰)が書けない限り、日本の景気を良くすることはできないのだ。

※週刊ポスト2015年3月20日号

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