最近メディアで耳にすることが多い「妊活」という言葉。妊娠をするための知識をつけたり、妊娠するにあたっての体の状況を知ったりするための活動のことで、有名人が妊活のための休業に入るというニュースも多い。
たとえば、お笑いトリオ・森三中の大島美幸は、2014年5月から妊活に専念するために芸能活動を休止。その後、人工授精の末に妊娠したことを、2015年2月に報告している。また、ロックバンド「マキシマム ザ ホルモン」のドラマー・ナヲは、妊活のために2015年5月末をもってライブ活動を一時休止すると発表。そのほかにも、2015年2月にブログで妊娠発覚を発表した元テニスプレーヤー・杉山愛も、長期にわたる妊活と不妊治療をしていたことを告白するなど、「妊活」というキーワードとともに、妊娠に向けた活動や不妊治療の重要性にスポットが当たっているのだ。
もちろん、妊娠は男女がいないとできないもの。しかし、メディアで取り上げられるのは女性の妊活ばかりだという現状もある。不妊体験者の支援を行っているNPO法人Fine(ファイン)理事長の松本亜樹子さんはこう話す。
「不妊の原因の半分は男性にあると言われています。でも、多くの男性は女性のほうに原因があると考えがちです。男性の妊活に対する認知度はまだまだ低いと言えますね」
森三中大島の夫である放送作家の鈴木おさむ氏は、ブログで自身の妊活を事細かに報告しているのだが、そのブログによると「僕の精子を検査した時に、精子の運動率があまりよくなかったりしたもので、それもあって早めの人工授精をすすめられました」とのこと。つまり、鈴木氏が妊活として精子の検査を受けなかったら、人工授精という選択に至らなかった可能性があるということなのだ。
「自分の精子の量や質が低い、あるいは低下しているなんて想像もしていない男性も多いと思います。そういう意味では、男性も早い段階から精子の状態を検査するなどの“妊活”をすることが重要だと思います」(松本さん)
自分の精子の運動率が低いことを知った鈴木氏は、男性の妊活について調べるようになったという。そして、ブログでは、「僕も自分の精子の状態を知ってから、食事や生活の面で変えたことや意識したこともたくさんあります。だから、その現実をもっと多くの男性に知ってほしいなと思ったりしてます」と、男性の妊活の必要性を訴えている。
では、実際に男性は妊活についてどう認識しているのだろうか。妊活・不妊治療情報サイト『妊活応援なび』では、「夫のホンネ大調査」として、28才から48才まで平均年齢37才の男性を対象とした妊活に関するアンケートを紹介している。
「不妊は男性にも原因があることは知っていましたか?」という質問で98%が「はい」と答えている。パートナーが不妊治療中の男性を対象としていることもあり、不妊についての認知度は高い模様。しかし、「精液検査に抵抗はありましたか?」という質問では、11%が「おおいにあった」、49%が「少しあった」という回答で、6割の男性が精液検査に抵抗があることがわかる。理由としては「自分に原因があったらと思うと怖い」というものが半数以上だったとのことで、 “男としてのアイデンティティやプライド”といった男性側の本音が見えてくる。
『妊活応援なび』における男性会員の割合は全体の4%未満程度とのこと。同サイトを運営するサンワードメディアの阿久津美紀さんは、こう説明する。
「『妊活という言葉は知っているし、関心もなくはない。不妊の原因が男性にある場合も多いということも知識としては理解している。だけど、実際にアクションを起こすまでには至らないし、自分とはあまり関係がないとどこかで思っている』というのが男性の妊活への意識の現状であり、それが会員数にもあらわれているように思われます。
もっともっと、世の中の男性に『妊活は2人でするもの』だということを知ってほしいですし、『赤ちゃんを授かるには2人で協力することが不可欠』であることを伝えていく、というのが今後の大きな課題です」
ちなみに、『妊活応援なび』では、不妊治療に力を入れている全国のクリニックや漢方薬局などの情報を提供しているが、それらの施設検索のページが平均してアクセスが多いという。
「掲載施設数は随時追加しています。詳細な施設情報を掲載するページについては、しっかりと取材を行い、正確な情報を伝えることが重要だと思います」(阿久津さん)
さらに前述のNPO法人Fineの松本さんは、ネット上の妊活情報についてこんな指摘をする。
「妊活において重要なのは、正確な知識を得ること。妊活や不妊治療に関する情報はネットにもたくさんありますが、玉石混淆なのは確かです。正しくない情報も多いので、そこを見極めるのが大切ですね」
「妊活ブーム」といわれる昨今だが、実は男性の意識はまだまだ低いのが現状。単なるブームに終わらせないためにも、男女ともに積極的に正しい知識を求めるところから始めてみる必要がありそうだ。