『アウト×デラックス』(フジテレビ系)に準レギュラーで出演。ハイトーンボイスの早口で、「わたくしはですねえ…」と個性的なトークを展開し、マツコ・デラックスや矢部浩之と対等に渡り合っている、棋士の加藤一二三九段(75才)。破顔一笑すればなんともお茶目なこの人。この4月で現役最年長棋士となる(現・現役最年長棋士・内藤国雄九段が3月で引退を表明)。
公式戦1319勝(3月9日現在)の輝かしい戦績を持つ半面、過去には20連敗し、大スランプといわれた時期も。
「それはわれながら大記録ですよ(笑い)。よくも負けたなと。ライバルの中原誠さんに、8年間1回も勝ってないんですよ。でもその当時はなんとも思ってなくて、たまたま負けたと思ってただけなんです。
その理由は、8年間内容的には負けてなかったので、負けてる実感がなかったんです。8年間負け続けても、“明くる日勝てる日がくるかもしれない、だから同じ調子でやろう”、というのがわたくしの勝負哲学だったんです。そして現にその日が来たんですよ。もちろん棋士たるもの、勝って強くなるべきですが…」
本人はそんな話をいたって楽しそうに話しているものの、寝起きをともにする家族はさぞや大変だったのでは? 現在、マネジャー的な役割を担う三女の百合さんはこう話す。
「何事にもネガティブな受け止め方をするのは好まないようで、対局後、客観的に見れば疲労困憊して帰ってきたようなときであっても、決して疲れたなどと口にしたことがないんです」
将棋一筋だった加藤九段が、2012年から『アウト×デラックス』に準レギュラーで出演、若い女性やカップルに声をかけられることも多くなったという。親しみやすい笑顔と個性的なキャラクターが受けるのだろう。ファンからは「ひふみん」と呼ばれることが多く、本人もこの呼び名をとても気に入っている。
「控えめに言っても3日に1回は声をかけられます。これから日本の社会を背負って立つ若いかたが、街で初めて会った私のような者に励ましの言葉をかけてくれて、“今の若者、いいなって”、すごく嬉しいです」
現役61年目。75才の挑戦は続く。
※女性セブン2015年3月26日号