子供がいて、年齢的にももう立派な「大人」なのに、実家に帰省すればお小遣いをもらい、マイホームを購入するとなれば親に頭金を出してもらう―─近年、大人になっても親の経済力に頼る人が急増している。そこで「女性セブン」は、子供がおり、両親が存命中の男女300人を対象にアンケート調査を実施した。
その結果、「社会人になってから自分の親、もしくは配偶者の親から金銭的援助を受けたことがありますか?」との問いに、ほぼ半数の48.3%が親からの金銭的援助を受けたことが「ある」と回答した。
なぜ、多くの人は「大人」になってからも親の経済力に頼るのか。甲南大学文学部の阿部真大准教授(社会学)は、親子間の「経済格差」が広がっていることが一因と指摘する。
「日本では若い世代に非正規雇用が広がり、正社員も実質賃金が減っています。これでは生活費や子供の教育資金に困るし、不動産の購入なんてとても無理という人が多い。
一方、高度経済成長やバブルの恩恵に浴した60代くらいまでの人は、現役時代の給料や退職金を充分に受け取っており、金銭的に余裕があります。単純な話、親がお金を持っていて、子供がお金を持っていないから、親から子へお金が動くんです」
日本銀行が発表する『資金循環統計』(2014年第3四半期速報)によると、現在、日本における個人金融資産は約1600兆円。そのうち約6割以上を保有しているのが60代以上の高齢者だ(総務省『家計調査』、2013年)。
55才の息子にお小遣いを渡しているという埼玉県在住の80才主婦が言う。
「息子家族がうちに遊びにきた時に、ふとあの子の財布を開けてみると、よれよれの千円札が3枚入っているだけでした。一家を支える大黒柱の懐具合として情けなく思い、こっそり一万円札を5枚入れておきました。
息子も一生懸命働いているのですが、あまりに不憫。今でも孫の進学や入学などお金が入り用のときはまとまった額を送っています」
阿部准教授は、このように親が子に経済的援助を惜しまない背景には、「家族が助け合うのは当然」という日本的な考え方があると指摘する。
「欧米では基本的に子供は成人すると親から自立し、いつまでも親と同居したり経済的に頼ることは恥ずかしいとされています。逆に日本や中国など東アジアの国は儒教の影響から、親が子の面倒を見るのは当たり前という考えが根強いため、親の援助にあまり抵抗がないんです」(阿部准教授)
※女性セブン2015年3月26日号