大相撲春場所で一際大きな声援を受けている力士がいる。“怪物くん”逸ノ城でも、イケメン力士・遠藤でも、地元大阪出身の豪栄道でもない。立ち合いの直前、自ら気合を入れるため「ホゥッ!」と吠えることで人気の琴勇輝(佐渡ヶ嶽部屋)である。
場所に先立つ2月24日に行なわれた力士会で、司会進行役だった横綱・白鵬から、同じく立ち合いで吠えるクセのある千代鳳(九重部屋)とともに名指しで注意された。
「犬じゃないんだから、吠えるな! やめろよ!」
そのため、この春場所では、本当に吠えなくなるかが注目された。しかもこの両者、番付が同じ前頭12枚目同士ということもあって、初日からいきなり「吠え力士」対決が実現。
両者が登場すると、館内から「声を出していいんだぞ!」という声援が飛ぶ。それに合わせて「そうだ、負けるな!」と別の激励も起きる。迎えた最後の仕切り。千代鳳は自粛したが、琴勇輝がいつも通り「ホゥッ!」と吠えると、館内には拍手とやんやの大歓声が湧き起こった。
琴勇輝は相撲には敗れたが、花道を引き揚げる際には勝った千代鳳より大きな拍手が送られた。続く2日目には幕内の土俵入りから大声援が浴びせられ、取組前の仕切りでまた「ホゥッ!」とやると喝采が上がった。
初日に“発声”を控えてしまった千代鳳は「オレは怖くてできなかった」と支度部屋でうなだれ、「琴勇輝関は男前だ。カッコいいよね」と尊敬の眼差し(?)を送っていた。
「琴勇輝がいつも通り吠えた理由は、師匠の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)が協会の意向を受けて、“横綱の言葉は気にするな。好きなようにやれ”と伝えたから。実は他の関取衆からも、琴勇輝に同情する声は多かったんです。
力士会の後には“横綱だってダメ出しとか懸賞金の受け取り方で問題が多いじゃないか。ユウキ(琴勇輝)のことをいえる立場じゃないよ”と白鵬の態度に反発する声が出ていたし、支度部屋では“千秋楽まで続けろよ”と琴勇輝にエールを送る関取もいました」(相撲担当記者)
さて、こうなると気になるのは、白鵬vs琴勇輝という因縁の取組がいつ実現するかである。
「横綱とは前頭4枚目くらいまでの力士でないと対戦はない。前頭12枚目の琴勇輝が白鵬と戦うとすれば優勝争いに絡むくらいの活躍が必要だ。
現実的には今場所で2桁勝って来場所で当たるのが最短。勝ち越しを続ければ、7月の名古屋場所か9月の秋場所には対戦が組まれるんじゃないか」(若手親方)
平成の大横綱の目の前で、ひときわ大きな「ホウッ!」を発してほしい。その時、白鵬はどんな横綱相撲を見せるのだろうか。
※週刊ポスト2015年3月27日号