レンジャーズ・ダルビッシュ有の肘の故障は日米球界に大きな衝撃を与えた。17日に手術を受ける予定で、長期離脱は避けられない事態となった。
近年のメジャーでは、肘を痛めてトミー・ジョン手術(※注)を受ける選手が絶えない。2014年1月から手術を受けた選手は33人(野手含む)に上る。
【※注/米国人外科医、フランク・ジョーブ氏によって考案された肘の靭帯再建手術。損傷した靱帯を切除し、別の部位から正常な腱の一部を摘出して移植する。1974年に初めて手術を受けたトミー・ジョン投手にちなんでそう呼ばれる】
なぜここまで故障者が多いのか。そしてなぜダルまでもが壊れてしまったのか。日米で唱えられている「中4日vs中6日」論争を検証しよう。
メジャーでは投手の球数が100球程度になるよう厳重に管理される。それは「肩や肘は消耗品」という考え方が根強いからだ。そのため完投+連投が当たり前の日本の高校野球は特に「悪しき慣習」とみなされており、日本の投手が故障した場合は「やっぱり」という評価を受ける。
しかしこの論調に、昨年ダル自身がNOを突きつけて話題となった。球宴前の会見でこう持論を展開した。
「球数は関係ない。140球を投げても、中5~6日あれば肘の炎症は回復する。故障の原因は主に米国球界の登板間隔にある。(中4日は)絶対に短すぎる」
『週刊ベースボール』(3月23日号)のインタビューでもダルは登板間隔の問題に言及。「中4日と中5日、この24時間があるかないかで選手の肘の状態は全然違ってくる」「マー君が肘を傷めたのには蓄積した疲労や登板間隔の問題があると僕は思っている」と語った。
MLBでもダルの意見に同調する声が上がり始めている。田中を先発の柱に据えるヤンキースのジラルディ監督は、「シーズン序盤は先発ローテーションを6人(中5日)で回していく」と表明している。
「中4日、100球」のメジャーと「中6日、140球」の日本のどちらが悪いのかは、スポーツ医学の面では結論は出ていない。日本体育協会公認スポーツドクターで、古川整形外科医院院長の古川泰三医師は、「個人差があるし、医学的に両者の違いは証明されていません」と語る。
※週刊ポスト2015年3月27日号