マンガ『巨人の星』にハマった読者は少なくないだろうが、それは実際の巨人の選手たちも同じだ。
「僕にとって野球マンガは『巨人の星』がすべて。人生の教科書なんです」
熱い眼差しで語るのは角盈男氏だ。
「心の底から飛雄馬になりたくて、足を高く上げるために柔軟体操をして、練習後はひたすらウサギ跳び。姉がいなかったので柱の陰から見守る明子姉ちゃん役をお袋に頼み、一徹が引っ繰り返すちゃぶ台(※注)までねだりました。スポーツ用品店で大リーグボール養成ギブスを注文しようとして、『無理です』と断わられたこともあります(笑い)」
【※注/父・一徹の「ちゃぶ台返し」は実は存在しない。これは飛雄馬に張り手をした際にひっくり返ってしまっただけなのだがアニメのエンディングで毎回そのシーンが流れたため有名になった】
1977年にドラフト3位で巨人軍に入団した角氏は翌年、新人王を獲得。その後のスランプから救ったのも飛雄馬だった。
「制球難から投球フォームを変えようと試行錯誤していた時、肩を痛めた飛雄馬が考案した大リーグボール3号を参考にして横から投げたら上手くいった。固定観念を持たず、“いい球ならどこから投げてもいい”と自由な発想を持てたのは飛雄馬のおかげです」
左のサイドスローという変速フォームにバッターはキリキリ舞い。抑えのエースとして名実ともに「巨人の星」となった。
※週刊ポスト2015年3月27日号