3月14日に北陸新幹線の長野~金沢間が開通し、東京~金沢間は約1時間20分の短縮となる2時間28分で繋がれるようになった。北陸新幹線の営業速度は260kmまでだが、東北新幹線の最高時速は320km、山陽新幹線は300kmを記録。日本の新幹線のスピードは、世界でもトップクラスだ。
これほどのスピードを実現しつつも、「安全性」と「定時運行率」は世界で群を抜いている。開業以来50年間「死傷者ゼロ」というのは世界と比較しても驚異的な記録である。
フランスのTGVでは過去に幾度も踏み切り事故が起こっている。2011年には中国・浙江省温州で死者40人(中国政府発表)の衝突・脱線事故が、2013年にはスペイン・ガリシア州で死者79人を出す高速鉄道の脱線事故が起きたことは記憶に新しい。日本の新幹線は他国と何が違うのか。国際高速鉄道協会の宿利正史・理事長がいう。
「日本の新幹線システムは、在来線や貨物鉄道と完全に分離され、踏切などの平面交差がない高速旅客鉄道専用線を走行しています。加えて、ATCシステム(自動列車制御装置)がある。これは、先行する列車との間隔や走行速度などを検知し、自動でブレーキをかけるシステムです。それらによって、衝突の可能性を排除していることが最大の特徴です」
安全にこだわる日本独自の技術は他にもある。そのひとつが地震対策だ。鉄道工学の第一人者で、工学院大学特任教授の曽根悟氏が解説する。
「海岸部などに設置した地震計がP波といわれる地震の初期微動を検知し、必要な場合には走行中の新幹線に非常ブレーキをかける『早期地震検知システム』が導入されています。また、脱線防止と脱線しても大きく逸脱させない仕組みを線路に敷設し、高架橋などの耐震基準も高めてきた。
東日本大震災では運行中の列車が多くあったにもかかわらず、1人の死傷者も出さず、対策の有効性が確認されました。50年にわたる日本の技術やノウハウは間違いなく世界一です」
※週刊ポスト2015年3月27日号