ビジネス

新幹線技術の海外売り込み 高い技術がネックとなる可能性も

 新幹線の誕生から51年目となる今年、北陸新幹線の開通と東海道新幹線の最高速度アップという2つの大きな話題で盛り上がっている。「スピード」に加え、「安全性」「正確性」を兼ね備えた新幹線の魅力は世界から熱い視線を浴びている。

 この技術をいかにして世界に売り込むかが日本の鉄道業界の新たなテーマだ。現在、高速鉄道の輸出ではフランスが先行している。TGVをベースにした車両はスペイン、韓国など各国で採用され、モロッコが年内に導入予定のアフリカ初の高速鉄道車両もTGVがベースになっている。

 これに追随するのが中国だ。国内での高速鉄道導入の際に日本やドイツ、フランスなどから吸収した技術をもとに、高速鉄道の輸出を開始し、トルコやルーマニア、ハンガリーなどの高速鉄道事業に関わって成果をあげている。

 日本の新幹線技術はこれまで2007年開通の台湾新幹線に導入されているが、採用されたのは車両のみ。列車無線や分岐器などはヨーロッパ製だ。日本は今後、絶対の安全性を誇る鉄道システム全体をパッケージで輸出したいと官民一体で狙っている。

 最大のターゲットとなっているのがインドだ。2014年9月の日印首脳会談で、ムンバイ-アーメダバード間約500kmを結ぶ高速鉄道計画を日本が支援することで合意、新幹線導入に向けた共同事業化調査を行なっている。7月にまとまる報告書を踏まえてインド政府が判断するが、中国やフランスなどライバルがひしめいている。

 マレーシア-シンガポール間約330kmを結ぶ高速鉄道計画も年内に入札が行なわれる予定だ。こちらもシンガポールのジョセフィン・テオ財務兼運輸担当上級国務大臣が新幹線の安全性に高い評価を示すなど、期待は高まっている。

「中国などのライバルと比べて新幹線のほうが総コストは高い。それでも耐久性やメンテナンスを考えれば、最終的には割安になると各国にアピールしている」(国交省関係者)

 しかし、その売り込みが成功するかどうかは未知数である。鉄道工学の第一人者で工学院大学特任教授の曽根悟氏がいう。

「これから新幹線を売り込もうとしている途上国では、日本と同レベルの定時運行率や地震などに備えた安全性よりも、同じ予算でより多くの路線を建設することを選び、日本の高い技術はオーバースペックとみなされる可能性が否定できません。日本が進めている運行システムを含めたパッケージ売りが受注のネックになる可能性もある」

 新幹線が世界に誇るべき技術であることは疑いない。それが単なる「ガラパゴス化」と取られないためには技術力と同等の魅力的なセールス力が必要だ。

※週刊ポスト2015年3月27日号

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《美女モデルと不倫》妻・観月あこに「ブラックカード」を渡していた錦織圭が見せた“倹約不倫デート”「3000円のユニクロスウェットを着て駅前チェーン喫茶店で逢瀬」
NEWSポストセブン
お疲れのご様子の雅子さま(2025年、沖縄県那覇市。撮影/JMPA) 
雅子さまにささやかれる体調不安、沖縄訪問時にもお疲れの様子 愛子さまが“異変”を察知し、とっさに助け舟を出される場面も
女性セブン
不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
新キャストとして登場して存在感を放つ妻夫木聡(時事通信フォト)
『あんぱん』で朝ドラ初出演・妻夫木聡は今田美桜の“兄貴分” 宝くじCMから始まった絆、プライベートで食事も
週刊ポスト
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン