「どこかの人が『フクシマはコントロールされている』といっているが、全然コントロールしていない! 呆れちゃいます!」
そう語気を強めてかつての“弟子”である安倍晋三・首相を批判したのは、小泉純一郎・元首相だ。
小泉氏は3月11日、福島・喜多方市内で講演に立った。再生可能エネルギー普及を目指す電力会社が主催し、約1000人が耳を傾けた。約60分間、小泉氏は脱原発の持論を展開した。
「原発推進論者は、原発は安全だ、コストが一番安い、クリーンだという。しかし、4年前の事故を見て自分なりに調べるうちに、全部ウソだとわかった! よくこんなウソを政府はいまだにいっているな」
細川護熙氏を擁立した昨年2月の都知事選中に行なわれた講演会では老人ネタのギャグを織り交ぜて会場を沸かしたが、この日はいたって真剣。やはり、軽口をたたけないほどに都知事選大敗が尾を引いているのか……と思いきや、“鉄板ネタ”が飛び出した。
「オンカロ(フィンランドの核廃棄物処理施設)の担当者たちが頭を悩ませているのは、何千年、何万年後に生きる人たちにどうやって危険な場所だと伝えるかということ。言葉の変化は早いですからね。
最近私が理解できない言葉が結構あるんですよ。たとえば『キモい』。キモ(肝)というくらいだから何か大事なことなのかと勘違いしていました(場内笑い)。30年くらい前まで『あの人はキレるね』というと、頭のいい人のことをいったものです。ところが今は怖くて使えません」
石油ショック時のトイレットペーパー不足から日本人の清潔さに話が及ぶと、
「外国人は日本の家に入るとき靴を脱いでスリッパを履くことを知っています。日本人はなんてきれい好きかと感心します。ところが、お座敷に入るとスリッパを脱がなくてはいけない。これには外国人も驚かされるそうです(場内笑い)」
としっかり笑いをとり、「『年寄りも大志を抱け』でいきたい」と締めくくった。
今回の講演は昨年5月に設立した自然エネルギー推進会議の活動の一環だ。小泉氏と親交のある経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が語る。
「小泉さんは首相退任後、経団連の中心企業が出資したシンクタンクを拠点に活動していたが、2013年夏に脱原発に動き出すと関係が切れた。入れ替わるように関係を深めたのが楽天の三木谷浩史氏を中心とする新経連(新経済連盟)。彼らの支援でできたのが自然エネルギー推進会議です。
最近の小泉さんは白髪こそ増えたが元気そのもの。先日も体調を尋ねたら、軽口を叩いて意気軒昂としていました。今後も同会議を拠点に発信を続けていくようです」
ライオンヘアの咆哮はまだまだ止みそうにない。
※週刊ポスト2015年3月27日号