音楽産業の厳しい現実が伝えられる今、急成長している分野がある。「ハイレゾ」。オーディオメーカーやレコード会社がこぞって新商品を投入し、最近よく耳にするようになった言葉だが、それはいったいどんな音なのだろう? 作家の山下柚実氏がソニーを訪ね、「ハイレゾ ウォークマン」開発とヒットの背景を聞いた。
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「ハイレゾ」とは、ハイレゾリューション、つまり高解像度の略。いったいこれまでの「音」と何がどう違うのか?
「情報量はCDを上回り、原音に近い空気感まで再現できます。データ量が大きい分、音域が豊かで臨場感やクリアな粒立ちを楽しめるのです」と同社・ウォークマンAシリーズのプロジェクトリーダー上村秀行氏。
「初のハイレゾ対応ウォークマンNW-ZW1がご好評をいただき、あらためて高音質に対するリスナーの関心がとても高いことに驚きました」
音楽業界では、“空気感”“臨場感”をいかに伝えるかが長年のテーマだった。たとえスタジオ録音の音源が技術革新によって高音質化していっても、ユーザーが手にするCDはそうではなかった。情報を大幅に圧縮して容量を軽くしていたからだ。
「耳には聴こえないとされる20キロヘルツ以上は、CD化の際に間引かれてきたのです。しかし、ハイレゾではCDでカットされる帯域の周波数まで含み、空気感や微妙なニュアンスも楽しめます」
なお、音として感じないためカットしてきた周波数帯域も、業界の様々な実験・研究を通して、実は体で感じていたり、音の膨らみを創り出す重要な要素だと分かってきた。ハイレゾ環境が浸透すれば、生演奏に限りなく近い音を再生して楽しむことが可能になる。
「ハイレゾ」は、耳の肥えた中高年のオーディオマニアがクラシックやジャズを楽しむもの実は私にはそんな思い込みがあった。その思い込みを見事に裏切ってくれたのがアニソンだ。