昨年末、山東省臨沂市の街頭に妙な看板が現れた。
「英明なる領袖(指導者の意味)、習近平主席執政2周年 夢の実現を天下の民が祝福します」というもので、その横に巨大な習近平国家主席の写真が飾られていたのだ。
これは紛れもなく、習近平氏が2年前の11月に中国共産党のトップである総書記に就任してから満2年を祝う特大の看板である。「夢の実現」とは、習氏が政治スローガンとして打ち出した「中国の夢」に他ならない。
ちなみに「英明なる領袖」とは、数千万の中国民衆が殺害された、中国現代史の「狂気の10年」と言われた文化大革命(1966~1976年)時代における毛沢東主席の呼び名だ。つまり、いつの間にか、習氏は毛沢東と同じく崇め奉られるようになっているのだ。
また、このところ中国では習氏の重要講話をまとめた「重要講話読本」の学習運動が党の末端組織から上部組織までいたるところで展開されている。1月下旬に各地で行われた大学院入試でも、習近平講話の内容が多数出題されたという。入試には思想政治理論という科目があり、これは英語とともに必須科目になっているからだ。
このため、一般党員のほか、学生らも習氏の重要講話読本は必読の書となっており、昨年6月下旬の発行以来、年末までの半年間で1500万部以上発行されている。
ちなみに中国で「毛沢東語録」は約10億部なので、習氏の本はそれに及ばないものの、発行部数だけみれば、習氏は毛沢東に次ぐ第2の「英明なる領袖」といえる。
北京の軍事筋は「習主席は本気で『毛沢東主席と並び称される偉大な指導者になる』と軍内で豪語している」と明かす。
中国では今年9月3日に、「反ファシズム・抗日戦争勝利70周年」を祝って、天安門楼上の前の長安街で大軍事パレードと閲兵式を開催する。軍事パレードは10年に1度実施されるのが定例化していたが、今回のように戦勝記念日の祝賀を兼ねたパレードは初めて。
これについて、人民日報は「日本を震え上がらせ、世界に向けて中国が戦後の世界秩序を守る断固たる決意を示す」ためと論評しているが、同筋は「習氏自身が軍事パレードと閲兵式を指揮することで、軍や党内などでの権力掌握を誇示する狙いがあるのは明らかだ」と指摘する。
文/ウィリー・ラム 翻訳・構成/相馬勝
※SAPIO2015年4月号