センバツ開幕を目前に、4月からも指揮を執るはずだった名門PL学園野球部の監督を務める校長・正井一真(67)が突然解任され、部員や保護者にも衝撃を与えているという。新監督には、PL教団職員で金沢北教会長などを務めた原加寿雄(53)が就任すると報じられている。
初めて正井に話を聞いたのは、昨年夏に大阪大会決勝で敗れ、新チームが始動した直後のことだった。すでに「校長監督」として1年が過ぎていたが、まだ戸惑いを見せていた。
「野球部とのかかわりはKK(桑田真澄、清原和博)の時代に、ブラスバンドの曲の選定など応援指導を行なったぐらいです。まさか65歳を過ぎて、野球のユニフォームを着るとは思ってもいませんでした(笑い)」
なぜ学園の責任者として正式な監督を決められないのかと質問すれば、母体である教団(パーフェクトリバティ教団)と、現場の部員や保護者との板挟みに遭う悩ましい心情を吐露していた。
「後任の監督にも信仰心が求められますし、教団の意をある程度、汲んでもらえる方でないといけません。生徒には申し訳ないですが、現在は適任者が見つかるまで“待ち”の状態です」(証言は本誌2014年9月5日号でレポートした)
昨年10月に、来年度からの部員募集停止を発表すると、一転して正井はだんまりを決め込み取材を受け付けなくなった。
状況を総合的に判断すれば、もはや野球部の廃部は既定路線だ。学園は新入部員を募集しないだけでなく、1959年に寄付されてグラウンドにした土地の返還を教団から求められ、隣接する室内練習場の取り壊しがすでに決まっているという情報もある。
プロ野球のキャンプ取材に訪れていたOBに聞くと、「室内練習場が取り壊されることは聞いています」と明かした。
しかし現役野球部員の保護者は「まったく知りません」という。やはり教団および学園と野球部との間には深い溝がある。
正井は取材に応じず、代わって校長となる草野裕樹(現教頭、元野球部長)を自宅前で直撃したが、こちらもノーコメントだった。
(文中敬称略)
●柳川悠二氏(ノンフィクションライター)と本誌取材班
※週刊ポスト2015年4月3日号