【書評】『サッカー界の 巨大な闇 八百長試合と違法賭博市場』ブレット・フォレスト著 堤理華訳/作品社/本体1800円+税
Brett Forrest(ブレット・フォレスト):1973年アメリカ生まれ。ミシガン大学卒業。ニューヨークの雑誌編集者を経て、1998年からおもに国際情勢をレポートするフリージャーナリストに。「タイム」、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」、「ヴァニティ・フェア」、「フォーチュン」など著名誌に寄稿。
【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)
インターネットの普及により、ここ10年ほどでスポーツ賭博市場は急拡大した。特にサッカー賭博はそうで、国際刑事警察機構(インターポール)の試算では、現在、世界中で年に1兆ドルが賭けられている。その巨大市場から利益を上げるため、犯罪組織が試合を不正に操作しようとするのは当然だろう。
実際、国際サッカー連盟(FIFA)に加盟する国と地域のうち半数で八百長の存在が報告されている。〈世界でもっとも人気のあるスポーツは、世界でもっとも腐敗したスポーツ〉なのである。
本書はアメリカ人ジャーナリストが国際的な取材を行ない、八百長とそれに伴う違法賭博の実態に光を当てたノンフィクションだ。
同様のテーマを扱った有名な先行作品にイギリス人ジャーナリスト・研究者のデクラン・ヒルによる『黒いワールドカップ』『あなたの見ている多くの試合に台本が存在する』があるが、それらが学術的な研究書の趣があるのに対し、本書は八百長を仕掛ける大物フィクサー、それを追う元FIFA保安部長に密着取材し、サスペンスタッチで描いている。取材のスケールが大きく、日本人ジャーナリストにはなかなか書けない作品だ。