「大塚家具」の経営権をめぐり、同社の大塚勝久・会長(71)長女の大塚久美子・社長(47)が繰り広げたプロキシーファイト(委任状争奪戦)が、3月27日に開かれる株主総会でついに決着する。
筆頭株主である勝久氏が保有するのは18.88%。対抗する久美子氏が握る家族の資産管理会社「ききょう企画」が10.21%、久美子氏自身は0.12%を保有する(昨年12月末日時点)。経済ジャーナリストの磯山友幸氏の解説だ。
「勝久氏側には、千代子夫人保有の約1.9%分を合わせ約20%の基礎票が見込める。一方の久美子氏側も、ききょう企画に加えて、現経営陣支持をすでに表明している米投資会社保有の10%超を足せば、ほぼ同数になる。自由投票を決めた約3%保有の従業員持株会はおおよそ半々に割れると予想されており、株主総会当日まで結果はわからない」
重要なのが機関投資家の動向だ。6.15%を持つ日本生命、3.37%を保有する東京海上日動火災の判断次第で形勢は変わる。
機関投資家が割れる事態になれば、「浮動票」である個人株主の行方が勝敗を左右する。つまり、どっちに転ぶかわからないほど、委任状争奪レースは混沌を極めている。前出・磯山氏がいう。
「個人株主の動向は読めないが、機関投資家は通常、会社側提案に賛成する場合が多い。しかし、それを承知で勝久氏は会見で『大株主さんは判断を間違えない』と自信とも取れるアピールをした。これほど先の読めない争奪戦は初めて。ただ問題は、勝敗が決しても、お家騒動が収束する保証はどこにもない点にある」
定石通り機関投資家が会社側提案に乗れば、久美子氏が多数派を握り、勝久氏が追放されることになる。それでも勝久氏は筆頭株主として影響力を保持したままだ。今回は敗れても勝久氏は何度でも「娘解任」を求める株主提案を行なうことができる。
「久美子さんが勝てば、会長だけでなく、父についた長男の勝之さん(専務)も会社から追放されるのは間違いない。そうなると、勝之さんに会社を継がせたいと考えている千代子夫人が、久美子さんを絶対に許さないだろう」(同社関係者)
もうひとつ、今回の内紛劇で見逃せないのは、上場企業が創業家一族の都合だけで振り回される異様さだ。一連の騒動により、これまで1000円近辺で推移していた大塚家具の株価は3月3日に2008年以降で最高値の2488円を付けた(3月19日現在は1507円)。
いまのままでは、「結果的に、今回の騒動で大儲けしたのは創業家一族だけ」(証券会社関係者)という笑えない事態になりかねないのだ。その批判を避けるためにも、一族は一刻も早く正常な企業統治を取り戻さなければならない。
※週刊ポスト2015年4月3日号