スザンヌが元・ソフトバンクホークスの斉藤和巳と離婚していたことを発表した。2人の間では、慰謝料や養育費に関して揉めているとの報道もあるが、夫は浮気、妻は家事放棄という夫婦が離婚する場合、夫側は家事放棄を理由に慰謝料の減額を求められるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
結婚して5年目。妻は専業主婦ですが、3年前から家事を放棄。我慢できずに離婚を申し立てたら、私の浮気がバレていたんです。妻は離婚を承諾する代わりに浮気された代償として多額の慰謝料を請求してきました。しかし、家事の放棄は許せません。その事実を引き合いに、慰謝料の減額は可能ですか。
【解答】
今は離婚調停中であると思います。慰謝料額で折り合えず、調停不成立になると、あなたは裁判で離婚を求めるしかありません。
裁判で奥さんが離婚に反対すると、民法第770条が定める離婚事由を証明する必要があります。その事由は相手方の不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明と回復の見込みのない強度の精神病が具体的に特定されています。
しかし、あなたの場合、該当する事情はありません。同法はこのほか、「婚姻を継続しがたい重大な事由」も離婚事由としています。例えば、家庭内暴力(DV)、配偶者からの暴言や侮辱的言動、度の過ぎた夫婦喧嘩、配偶者の犯罪、家庭を顧みない宗教活動、実家とのトラブル、異常な浪費による経済的破綻、長期の別居生活など、様々な事由により、婚姻関係が破たんした場合に、責任のない配偶者の方から離婚を求めることができます。
奥さんの家事放棄が原因で、夫婦仲が悪くなり、社会一般の通念から離婚やむなしと判断されれば、婚姻関係が破たんしたとして離婚が認められますが、家事の程度は千差万別で、ずぼらな奥さんは稀ではありません。夫も手伝って努力すべきとの意見も出そうです。
家事放棄が病的とまでいえないと、離婚は難しいと思います。加えて、あなたの浮気が夫婦疎遠の原因、あるいは離婚を求める動機である場合、あなたこそ決定的な離婚原因を作った有責配偶者として、離婚は認められない可能性が大です。調停委員の意見も聞き、慰謝料の額で妥協を図るべきです。
なお、慰謝料の額の算定は、奥さんの精神的損害の程度のほか、様々な要素が加味されます。あなたの浮気が、奥さんの度を超した家事放棄のせいだと判断されれば、一種の過失相殺として減額されることになるでしょう。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年4月3日号