生きがいと年金プラスαの収入の両立を目指す「シニア起業」が増えている。会社設立や個人事業主という方法もあるが、一般社団法人やNPO(特定非営利)法人による起業をするケースもある。東京・渋谷で、食事を通じてアスリートやスポーツを楽しむ人々をサポートする「食インストラクター」を育成する「食アスリート協会」を2013年に設立した神藤啓司氏(51)も一般社団法人による起業を選んだ。現在は同協会の代表理事を務めている。
神藤氏によれば、2014年の講座の売り上げは約800万円。支出として会議室代(1回の相場が約10万円)、講師代の人件費、テキストや資料などのコンテンツ代などがかかり、「儲けはそれほどは出ない」と語る。
それでも神藤氏が一般社団法人による起業を選んだのは「スポーツと食事による社会貢献」を重視したからだという。
「純粋に利益を求めるなら株式会社にした方がいい。儲けを配当として自分で受け取ることもできますから。しかしそれでは常に収益が目的になってしまう。私がやりたかったのは、米や味噌汁といった、日本食を中心に据えた『食アススタイル』と呼ぶ理論を広く伝えることです。これを確実に実現する方法として、一般財団法人を選びました」(神藤氏)
設立の手軽さも魅力だった。シニアの起業支援を行なう「銀座セカンドライフ」代表の片桐実央氏が解説する。
「一般社団法人は1か月ほどで設立できます。人数も2人以上いれば設立可能。営利法人と比べて会社設立の諸経費の負担が少ないのもメリットです」
それでいて「社会的信用」を得やすい。
「認定ビジネスは、商売目的と見られがちな会社組織で行なうよりも、一般社団法人にした方が世間一般の認識としては信用度が高くなります」(同前)
認定ビジネスの課題は講師などの人材確保だ。神藤氏が語る。
「最初は費用の工面よりも人脈や事前準備が大切。講師がいないと話にならない。私は栄養面を指導できる管理栄養士でスポーツに必要な食事に精通する適任者を講師に見つけることができたので、比較的スムーズにスタートできたと思います」
※週刊ポスト2015年4月3日号