神戸牛など「和牛」肉は日本が世界に誇る食肉ブランドだが、実は海外にはすでに和牛由来と称する「WAGYU」肉が販売されている。和牛の本格輸出が始まった今、「和牛」vs.「WAGYU」のバトルが始まった。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。
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国産和牛を海外に輸出しようという動きが本格化してきた。だがそこには海外産の「WAGYU」というライバルがたちはだかる。和牛の血統に海外のアンガス種などをかけあわせた「WAGYU」が海外ではすでに受け入れられている。
海外に和牛がわたったのは1990年代のこと。200頭以上の和牛と精液入り試験管1万本以上がアメリカに持ちだされた。そこからオーストラリアへと渡ったところから、海外産「WAGYU」は存在感を増してきた。以前、日本人の仕掛け人がインタビューで、「(乳牛、豚、鶏など)日本の畜産業は外国産の品種に支えられてきた」「日本だけが和牛を抱えるのは日本のエゴ」「消費者にうまいものを食べてもらう。これが百姓の天命」などと語っていた。
だがこの件について関係者の評価はさまざまだ。裏切り者扱いする関係者も少なくない。オーストラリアの「WAGYU遺伝子販売業者」は受精卵、年間4000本をアメリカ、イギリス、ドイツ、中国のほかニュージーランドや南アフリカ9か国に輸出している。
組織としても「オーストラリア和牛協会」、「ブラジル和牛生産者協会」など海外には「WAGYU」関連の協会もあり、オーストラリア和牛協会などは「和牛にオーストラリア産も日本産もない」と、「和牛遺伝子を50%以上受け継いだ牛に証明書」を出しているという。中国では乳牛に受精卵を着床させ、代理出産まで行われている。
だが本家、日本の”和牛”も手をこまねいているわけではない。”和牛香”と言われる和牛特有の香りに対する研究も進んでいる。すでに認知の高い「神戸牛」を旗頭に統一ブランドの「WAGYU」でEU圏などに売り込もうという動きもある。
海外市場の調査にも熱が入り始めた。JETRO(日本貿易振興機構)はこの3月、「日本産和牛の流通構造、主要事業者、普及のための課題および提案」という報告書で、EU圏で日本産和牛がどう扱われているかをまとめている。