これで本当に「幕引き」と思っているのなら、国民への背信では理化学研究所も小保方晴子氏と同罪だ。
STAP細胞論文の研究不正問題で、理研は小保方氏の刑事告訴を見送った。さらに、小保方氏に支給した研究費が計約4600万円、論文不正の調査や検証にかけた費用が総額8360万円あったにもかかわらず、返還を求めたのは論文投稿費の60万円のみ。会見した理研の坪井裕理事は「不正への措置はこれですべて終わり」と明言した。
この結末は小保方氏の「逃げ得」というほかない。理研調査委員会の報告書によって、小保方氏のSTAP細胞が既存のES細胞と同じものだったことが明らかになった。
さらに、小保方氏の研究室で見つかったES細胞は、かつて理研に所属していた若山照彦氏(現・山梨大教授)の研究室にあったものと同一だったとされる。状況を客観的に見れば、小保方氏がES細胞を混入した疑いは拭えない。
にもかかわらず、理研は「証拠を集めるのは難しい」として、刑事告訴は困難と判断したというのだ。
小保方氏と同じ早稲田大学理工学部出身で、研究不正に詳しいみずほ中央法律事務所代表弁護士の三平聡史氏がいう。
「これで刑事告訴の機会が失われた。理研が証拠を集められないなら、強制力のある捜査・司法が『誰がES細胞を混入させたのか』『混入は故意だったのか』を解明すべきなのに、理研は自らの判断で真相究明の機会を放棄してしまった」
独立行政法人である理研は税金で運営されている。“STAP研究”の原資もそうだ。当然、理研には国民が納得する調査と解明をする責任がある。
「理研は追及する立場である一方、不正を見逃してしまった責任も抱えている。組織や上層部の責任問題に発展する前に、できるだけ騒ぎにならないように幕引きしたいと考えたのでしょう。
だが、何もしないのでは事態は収束しない。そこで、申し訳程度の金額を請求したのでしょう」(前出・三平氏)
「60万円」は理研にとって自らの責任追及を避けるための“免罪符代”だったという指摘だ。
※週刊ポスト2015年4月10日号