ボクシング界の「世紀の対決」が1か月後に近づいてきた。5階級制覇王者にして47戦47勝のフロイド・メイウェザー(38・米国)と、史上2人目の6階級制覇王者マニー・パッキャオ(36・フィリピン。戦績・64戦57勝5敗2分)の一戦は5月2日にゴングが鳴る。
そんな一戦に特別な感慨を持つ元日本ランカーがいる。元日本フライ級2位の寺尾新氏(44)だ。今でこそ世界的スーパースターとなったパッキャオだが、実はスターへの階段を駆け上がっていた頃に日本のリングに一度だけ上がっている。そこで対戦したのが寺尾氏だ。
寺尾氏は空手やキックボクシングを経て1995年にプロデビュー。インファイトを得意とする攻撃的なスタイルで、日本タイトルにも挑戦した実績を持つ(通算成績は16戦10勝5敗1分)。パッキャオとの試合は1998年5月、後楽園ホール(東京・文京区)でメインイベントとして行なわれた。
当時、寺尾氏は27歳。パッキャオはまだ19歳だったが、前年に東洋太平洋(OPBF)フライ級王座を獲得し、世界ボクシング協会(WBA)5位、世界ボクシング評議会(WBC)7位にランクされていた。とはいえ、日本ではまだあまり知られていないマイナー選手。寺尾氏には勝算があった。
「僕はパッキャオ戦まで5勝1分と絶好調でした。『化け物みたいに強い』と噂は聞いていましたが自信はありました」(寺尾氏)
しかし蓋を開けてみれば1Rで3度のダウンを奪われ、2分59秒でKO負け。リングを転げ回り、大の字に倒れてしまう壮絶なダウンだった。
「地獄の3分間でした。私だって相手を殺すつもりで練習してきましたが、あの時は本当に殺されると思った。もう二度と戦いたくありません」
※週刊ポスト2015年4月10日号