今から50年前、読売巨人軍が9年連続日本一を続けていたころ、チーム順位はほとんどBクラスだったものの対巨人戦で強さを発揮していたのは広島カープだった。右肩のケガが原因でプロ生活をわずか3年で引退、1962年に史上最年少となる25歳で広島の打撃コーチに就任した上田利治氏が、V9巨人に広島が強かった秘密を語った。
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僕がコーチをしていた頃の広島は5位か6位が定位置でした。でも意外と思われるかもしれませんが、巨人戦においては「巨人殺し」といわれるほど善戦していました。
当時の巨人戦は(広島)市民球場が満員になる数少ないカード。営業的にも負けられないからエース級をぶつけるし、野手も巨人相手にどれぐらいできるかを試すために他の対戦相手に比べてハッスルしていたからです。
一方の巨人にとって広島戦は箸休めみたいなもの。広島3連戦は2勝1敗か1勝2敗で構わないという考えで、優勝を争う中日や阪神に重心を置き、そちらにエース級をぶつけていた。だから広島は巨人に対して良い勝負ができた。まァ、息抜きでやっていた巨人と目一杯やっていた広島が互角だったという、恥ずかしい話ではあるんですけどね(笑い)。
広島が下位をウロウロしていたのは、頑張った巨人戦の反動が次のカードに出たからでもある。広島は巨人戦のあと3連敗することが珍しくなく、鯉のぼりの季節が終わると大抵“定位置”にいました(苦笑)。
※週刊ポスト2015年4月10日号