打撃だけでなく華麗な守備で鳴らし、野球の天才といわれた篠塚和典(※1992年までの登録名は利夫)氏は、ダイヤモンドグラブ賞獲得4回を数える。1980年代の読売巨人軍を代表する二塁手だった篠塚氏が、河埜(こうの)和正氏とのコンビで日本中をうならせた、華麗なゲッツーについて語った。
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二塁手をやるようになったのは巨人に入団してから。高校時代まで遊撃手だったのでかなり戸惑いました。動きが逆だし、とにかく地味なポジションでしたから、最初はやりたくないと思っていました(笑い)。でも走者をかわしながら送球したり、緩いゴロでのダブルプレーなど、ファンを沸かせるプレーができるようになって、二塁手が面白くなっていきましたね。
二遊間の最大の見せ場はダブルプレーです。確実に、そして華麗に2つのアウトを一気に取るのが、いい二遊間の判断基準になると思います。ノーアウト一塁がツーアウトランナーなしとなり、相手のチャンスを一気に潰すことができる。相手にとってダメージは大きく、こんな痛快なことはありませんからね。だから守っている時は、相手打者に「塁に出てくれよ」と祈っていました(笑い)。
二遊間は投手との関係も大切です。ゲッツーが取れる場面で、投手が初球から内野ゴロになる確率の低い高めのボールを投げたりすると、守っている方がシラけてしまう。ワンバウンドならまだしも、投手が高めばかり投げているようだと、内野手もやる気がなくなります。
「センターラインで野球をする」というのはバッテリーと二遊間で頭脳的にゲッツーを取ることも含まれていると思う。バッテリーの「なんとしてもゲッツーを取りたい」という雰囲気が、華麗な内野手のダブルプレーを生むのです。
緩い遊ゴロの場合、走者が二塁ベースに近づいているので交錯プレーになりやすい。送球がどの位置に来るかを確認しながら、走者のスライディングも計算する。それをかわしながら一塁に強い球を投げる。イメージ通りにゲッツーが取れた時はガッツポーズが自然に出た。
僕は河埜和正さんとのコンビが多かったが、盗塁やゲッツーでどっちがベースカバーに入るかはアイコンタクトでした。右打者か左打者かでも違うし、捕手が内角と外角のどっちに構えたかで打球の方向もだいたいわかります。河埜さんとは阿吽の呼吸で守っていました。