これまで「ふるさと納税」といえば、自治体に寄付すると特典として税額控除と高級和牛肉や銘酒などの名産品が受け取れるというものだった。そのブームが過熱し、自治体からの贈呈品が多様化している。
鳥取市では1万円以上寄付した特典として、鳥取砂丘での「パラグライダー半日体験」が人気を博している。
障害物がない砂丘の上を滑空し、日本海や大山の大パノラマを堪能できる。柔らかい砂に着地するため、3歳から80歳までが体験可能だという。必要なのは保険代1000円のみで、4月からは「5万円以上の寄付でパラグライダー1日体験」というコースも登場した。
ふるさと納税は地方自治体に寄付すると、「2000円を超える部分」について自分が住んでいる自治体に払う住民税の控除や所得税の還付が受けられる仕組みだ。つまり1万円寄付した場合、8000円税金が安くなる。
さらに多くの自治体が寄付への「お礼」となる贈呈品を用意しているため、「実質負担2000円で名産品がもらえる」と話題になった。「ふるさと」といっても寄付先は自分の故郷の自治体でなくてもOK。そのため各自治体が全国から寄付を集めるべく特典を競い合っている。さらに4月からの制度改正で、ふるさと納税はよりお得になる。
今年度税制改正のポイントは2つあり、1つは控除額の上限が増えること。先ほど寄付額から2000円を除いた分が控除されると説明したが、これまではもうひとつ制限があり、個人住民税の1割が控除額の上限だった。
その上限が4月から2割にアップする。たとえば専業主婦の妻と2人暮らしの年収500万円のサラリーマンの場合、実質負担2000円で済む寄付の上限は3万円から5万9000円に増える。
2つ目のポイントはこれまで控除を受けるために必要だった確定申告が不要となることだ。寄付先の自治体に翌年の確定申告での控除申請の代行を頼めるようになったのである(ふるさと納税ワンストップ特例制度)。
もともと確定申告の必要ないサラリーマンで、寄付先の自治体が5か所以内の場合に利用可能。『完全ガイド 100%得をする「ふるさと納税」生活』(扶桑社刊)の著者・金森重樹氏がいう。
「控除額の拡大と手続きの簡素化、さらに寄付金に対するお礼の“還元率”を上げる自治体が増えているので、4月以降はブームに拍車がかかるのではないか。自治体によっては寄付が殺到して特典が品切れ状態になる可能性もある」
案の定、各自治体はさらに趣向を凝らした贈呈品を考え、競争がさらに激化している。
※週刊ポスト2015年4月17日号