29歳にして今季の米女子ツアーに初挑戦し、メジャー初戦となる『ANAインスピレーション』(4月2~5日)の出場を果たしたプロゴルファー・横峯さくら。
もともと国内では101試合連続予選通過の日本記録をもち、生涯獲得賞金額が10億円を超える実力者である。しかし米ツアー開幕からその高い壁に阻まれ、3週連続で予選落ちしていた。
ブログに〈凹みますね〉とコメントを載せるなどすっかり気落ちしていたが、そんな横峯を支えたのが、夫でありメンタルトレーナーの森川陽太郎氏(33)だ。
4戦目の『起亜クラシック』(3月26~29日)で8位入賞を果たした際に横峯は、
「主人と話し合い、この大会から試合に臨む意識を変えた。予選通過を目標にしていたのを、試合が始まる前から優勝をめざそうと決めた」
と夫の“内助の功”を強調。見守っていた森川氏も「ようやく安心して(横峯のプレーを)見ていられた」と安堵の表情を浮かべた。
「森川氏は『OKラインメンタルトレーニング』という独自の理論を展開している。完璧ではなくとも自分ができたことをちゃんと認め、目標を徐々に引き上げるなどして次につなげる手法です。
横峯の場合、“難しいホールならボギーでもOK”“ラフでもライがよければOK”などと状況に応じて『OKライン』を設定することでプレッシャーを軽減させました」(ゴルフ担当記者)
ゴルフはメンタル面が大きく影響する競技。特に日本人が米女子ツアーに挑戦すると、環境の変化と語学に悩むケースが多い。上田桃子(28)や有村智恵(27)はそれで失敗した。横峯もかつては勝負の短いパットを外すなど、メンタルの弱さが指摘されることが多かっただけに、森川氏の存在がプラスに作用していることは確かだろう。
スポーツ心理学者で追手門学院大学客員教授の児玉光雄氏は、夫がメンタルトレーナーであることの利点を次のように話す。
「コミュニケーションをかわす機会が多いので、お互いに問題点を探りながら深い議論ができる。公私両面での関係が近すぎるため、結果が出なければ夫婦関係まで壊れてしまうリスクもあるが、横峯選手と森川氏の場合はうまいほうに機能したのでしょう」
日本女子ゴルフ界きっての海外嫌いといわれていた横峯が米ツアー挑戦を決めたのも夫の影響。ことあるごとに「夫と一緒に」と語り、二人三脚ぶりを見せつけている。かつて“一卵性親子”と呼ばれ、横峯の試合に付きっきりだった良郎パパはどんな思いなのだろうか。
「初めてのコースでさくらの準備不足は明らかだった。でも、新しい自分を見つけるために挑戦し、旦那がうまく支えてくれているようです。すっかり父離れしちゃって、俺としては寂しいけれどね……」
森川氏の仕事ぶりには“これくらいでOK”というリミットはなさそうである。
※週刊ポスト2015年4月17日号