開幕スタートダッシュにこそ失敗したが、今年こそ悲願の優勝という思いで盛り上がる広島カープ。黒田博樹の復帰だけでなく、ほかにも様々な吉兆がある。過去の優勝時との「共通点」を指摘する声が多いのだ。
球団記録の通算213勝を挙げた1970、1980年代のエース・北別府学氏は連続日本一を果たした1979、1980年との共通点を指摘する。
「広島は1975年、僕がドラフトで指名された年に初優勝して“赤ヘル旋風”を起こしてから、Aクラス常連になった。それまで下位が当たり前だったチーム内に、“やればできる”という思いが浸透し、1979年、1980年に2年連続日本一を成し遂げました。今の選手たちもAクラスは当たり前に思って“優勝”を口にしている。強かった頃の雰囲気を思い出します」
1960年代を支えたエースの安仁屋宗八(あにや・そうはち)氏が語る。
「僕は1986年に優勝した時にチーム構成がよく似ていると思うね。ベテランの山本浩二、衣笠祥雄がどっしりと構えて、中堅の高橋慶彦、北別府が牽引し、若手には正田耕三らがいた。今年はベテランに黒田と新井貴浩がいるし、中堅には丸佳浩にマエケン、若手には菊池涼介や大瀬良大地がいる。それに1986年は阿南準郎監督、今年は緒方孝市監督、それぞれ1年目ということも同じです」
1年目監督という点では1975年も同じだった。この年はメジャー出身のルーツが監督に就任。その後、審判への暴行によりわずか1か月で退団(古葉竹織監督に交代)しているが、これも意外に緒方監督と共通するという。
「甘いマスクからクールそうに見える緒方監督ですが、思いのほか“武闘派”なんです。コーチ時代も阪神戦で乱闘騒ぎが起きたとき、相手のブラゼルのところに一目散に突っ込んでいったし、今年も先日の横浜戦では相手投手の投球をボークじゃないかと罵声を浴びせながら審判に噛みついていた。あの前田智徳さんも“チームで一番怖いのは緒方さん”と語っていた」(スポーツ紙記者)
ファンの雰囲気にも共通点がある。1975年は万年Bクラスに沈んでいたところからの初優勝。5~6位が指定席だった低迷期からの復活と状況が同じだ。“カープ芸人”として知られ、球団の内情にも詳しいお笑いコンビ「ザ・ギース」の尾関高文氏が語る。
「弱いカープを盛り立てようとファンが『カープを優勝させる会』を東京で結成したのが1966年。全国的知名度を高めることでチームに勢いが出て、1975年の優勝につながった。最近のカープ女子の激増などでビジターでも球場が真っ赤に染まる状況がよく似ています。
ただ、弱いカープを知るファンは浮かれてはいけないという気持ちがどこかにある。優勝できるかを訊かれると小さい声で“間違いないです”といっています(笑い)」
※週刊ポスト2015年4月17日号