各地の特産品がもらえると話題になり大ブームとなった「ふるさと納税」。4月から控除額の上限が増えたり、これまで控除を受けるために必要だった確定申告が不要になったりと、制度改正によりさらにお得になる。
今後、ブームに拍車がかかるとの予測もある中、各自治体はますます趣向を凝らした贈答品を考え、その額も高額化へとエスカレートしている。その一方で、換金性とは無縁の「体験型」の特典にも注目が集まっている。
武田信玄のお膝元である山梨県笛吹市では、100万円以上の寄付者のうちの希望者から抽選で、春祭りのメインイベント「川中島合戦戦国絵巻」での「武田信玄役」を決める。
祭りは参加者が武田軍と上杉軍に扮し、火縄銃の実演などを行ない、武田信玄と上杉謙信の一騎撃ちでクライマックスを迎える。ちなみに上杉謙信役が「50万円以上100万円未満の寄付者の希望者から抽選」とややお安いが、これは“お国柄”か。
同じ体験型では山形県天童市が100万円以上の寄付者に用意したのが、サッカーJ1クラブのモンテディオ山形の「1日社長」体験だ。1日限りながら「社長名刺」を持ち、社長としてロッカールームで選手に訓示を垂れることができる。
香川県東かがわ市では「1日市長」、山形県真室川町、群馬県中之条町では「1日町長」が100万円以上の寄付で体験できる。
こちらは市長室、町長室で「首長の椅子」に座っての記念撮影が可能だという(ちなみに中之条町の町長室は、小渕優子・元経産相の政治資金問題に関連して家宅捜索を受けたことでも話題になった)。
さらにユニークなのが兵庫県多可町だ。町が運営するケーブルテレビ局「たかテレビ」の「ニュースキャスターになれる券」、ご当地ヒーローの「タカゴールドになれる券」をそれぞれ限定1名に「100万円以上」で提供する。しかも1年間の“レギュラー出演”が保証される。
特産物にとどまらない特典の拡充について、『完全ガイド 100%得をする「ふるさと納税」生活』(扶桑社刊)の著者・金森重樹氏はこういう。
「グルメ品は単身者にとっては量が多く、調理も面倒だと敬遠されがちだった。高額寄付が必要な目玉商品は手が届かない人が多いが、地域で使える感謝券や手軽な金額の体験型の特典の登場で、ふるさと納税の裾野はさらに広がるのでないか」
※週刊ポスト2015年4月17日号