日経平均株価の上昇が続いている。こういうときこそ暴落への備えをするべきだという大前研一氏が、バブルがはじけた時に逃げ遅れないための心得を解説する。
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日本の株価が上がっている理由の一つは、多くの企業で株の配当金が「時価の3%」程度になっているため、機関投資家は金利が0.4%以下の銀行に預けたり、国債を買ったりするよりも、株を持っていたほうが高い運用益を得ることができるからだ。つまり、とりあえずは株を買ったほうがいいだろうということで、生命保険会社などの機関投資家や金融機関が資金を株にシフトしているのだ。
ただし、株価は必ずどこかで下がるし、「山高ければ谷深し」という株式相場の格言があるように、上げ幅が大きいほど下げ幅も大きくなる。それは日本が25年前のバブル崩壊、15年前のITバブル崩壊、さらにわずか7年前のリーマン・ショックで痛いほど経験してきたことである。
たとえば、バブルの時、日経平均株価は1989年12月29日の大納会の日、終値で3万8915円の史上最高を記録した。多くの経済アナリストは「1990年春あたりに4万円を突破する」と予測し、なかには「6万円台まで行く」とぶち上げる証券会社もあった。しかし、株価は1990年に入ると下がり、10月に暴落した。
誰もがバブルに酔って感覚を麻痺させていたわけで、これはITバブルの時もリーマン・ショックの時も全く同じである。その教訓を忘れることなく、冷静に相場の動きを読みながら資産運用すべきだと思うのだ。
では、株を持っている個人は、いつか必ずやってくる暴落にどう備えればよいのか? これまでの株価上昇局面ではインデックス買い(日経平均株価やTOPIXといったマーケットの指数に連動するように保有銘柄を買い付けること)でもよかったが、今後は銘柄をバラしていかねばならない。インデックスだと日経平均株価が暴落したら、逃げられないからである。
株式投資の基本を忘れず、自分でPER(時価総額÷純利益)やEBIT(税引前当期純利益+支払利息-受取利息)などの指標で判断して個別銘柄を選んでいれば、大やけどはしないはずだ。
もっとシリアスな国債暴落というシナリオに備えるなら、インフラ銘柄などもリスクが高い。より消費者に近い食品業界や日用品業界の強い会社を買っておいたほうが賢明だ。
そして、下落局面に備えて投資の「3分法」を頭に入れておくべきだろう。「やばいかな」と思ったら3分の1を売り、下がり始めたらさらに3分の1を売り、大きく下がってきたら最後の3分の1を売る手法だ。ここから先“アベノミクスバブル”がはじけた時に逃げ遅れないためには、嗅覚の鋭い外国人投資家の動きを注視しなければならない。
※週刊ポスト2015年4月17日号