安全といわれていたチュニジアで、日本人観光客3人を含む外国人観光客など21人が殺害された。世界でイスラム過激派によるテロの連鎖が怖れられているが、中東から近い欧州にも危険信号が点滅する。
「イスラム教徒は欧州全土に拡散している。イスラム教徒だからテロを行うわけではないが、イスラム原理主義に共感する一定の若者がいる以上、危険性は強まる。また、イスラム教徒の多い地域にあるモスクでは、“白人と戦え”というアジテーションが行われているところもあり、観光地だけでなく、人口が集中するパリ、ローマ、ロンドンなど都市部でのテロが行われる可能性がある。観光目的だけでなく、ビジネスで渡欧する日本人も要注意だ」(ジャーナリストの黒井文太郎氏)
日本から近い東南アジアも安全とは言えない。黒井氏は、世界最多のイスラム教徒数を誇るインドネシアに注目する。
「インドネシアにはアルカイダとつながりがあるとされるジェマ・イスラミアはじめイスラム過激派組織が多く、人気リゾート地のバリ島や首都ジャカルタでは何度も爆弾テロが発生している。同じくイスラム教徒の多いマレーシアでもテロの可能性があり、マレーシア当局はこれまでISのリクルーターを100名以上も逮捕している」
最近では3月上旬、IS支援を目的に国内でメンバー勧誘などをしていた男女3人をマレーシア警察が相次いで逮捕した。不気味な徴候である。フィリピン南部を拠点とするイスラム過激派アブ・サヤフの動向もマークしたい。
「彼らの活動はテロリストというより山賊や海賊。テロよりも身代金目的の誘拐に注意すべきだ」(黒井氏)
危機管理に詳しい大泉光一・青森中央学院大学教授はディープな観光スポットとして日本人に人気のインドを注視する。
「現在、パキスタンのテロ組織がインド国内に入り込んでいる。チュニジアのテロに触発されたパキスタンの過激派がインドを舞台にして、派手なテロ活動を展開する可能性がある」
日本の隣国・中国はどうか。
「ウイグル族による国内テロ問題を抱えるが、習近平は国の威信を懸けて警備態勢を強化している。絶対安全ではないが、大規模テロの発生確率は低い」(大泉氏)
世界各地で募る危機に日本人はどう対処すべきか。
「都市中心部や空港、銀行などで偶発的にテロに巻き込まれる危険があるが、銃撃犯は動くものに反応するので、身の危険を感じたらすぐに伏せて動かないこと。チュニジア事件のように観光客狙いのテロを回避するのは難しいが、一か所に長い時間とどまらず、次々と名所を移動するとテロリストに動きが把握されづらく、結果的にテロを免れやすいという研究報告がある」(大泉氏)
観光客の多い場所であまりの長居は禁物だ。
※週刊ポスト2015年4月10日号