政治家やタレントなどの失言が世間で問題になることはよくある。そのなかには、あくまでテレビ独特のルールに反したということでタブー扱いされたものも少なくない。NHKを除く民放各社が、政治以上に気を使うタブーは番組にCMを提供する「スポンサー」である。民放にとってはスポンサーこそが、資金を提供してくれる顧客なのである。それゆえに、視聴者にとっては何でもない発言が、スポンサーに抵触して大問題になることがある。
1997年8月、深夜の情報番組『トゥナイト2』(テレビ朝日系)のレポーターの乱一世は、CMに入る直前、「この2分間にトイレに行かないと大変なことになります」と発言。これにより、乱一世が番組を降板するのみならず、番組担当の取締役が減俸、プロデューサーは業務停止処分が下される一大事となった。
いったいこの発言の何が問題だったのか。CMを提供し、番組を成り立たさせているスポンサーを軽視する姿勢が重大な問題とされたのである。視聴者にとってはCMより番組だろうが、スポンサーにとってはCMを見てもらわなければテレビ局に広告費を払う意味がない。だからこそこの発言は、発言した本人にとどまらない不祥事となったのだ。
よりわかりやすい例が、みのもんたのケースである。2005年6月3日の『朝ズバッ!』(TBS系列)で、「皆さん、ビオフェルミンなんてお飲みになってるじゃないですか、胃腸薬。だったらビールを飲んだ方がいいくらい」と発言した。
いつもの「みの節」とお茶の間は聞き流していたはずだが、奇遇なことに当時、ビオフェルミン製薬は番組スポンサーだった。みのは放送の3日後には番組内で謝罪し、番組ホームページ上にも訂正文が掲載された。だがそうした対応があってもなお、発言から5日後にはビオフェルミン製薬がスポンサーを降板することとなった。
※SAPIO2015年5月号