流暢な日本語を話す端正な顔立ちのアメリカ人。本人が「最近、パックンってお笑い芸人だったんだねってよく言われるんですよ」と話すとおり、MC、コメンテーター、ナレーター、役者と、芸人以外でも幅広い活躍で様々なメディアに登場している、パックン(44才)。そんな彼がなぜ日本に来たのか、なぜ芸人なのか、なぜマルチに活躍できるのか。その才能の理由を探ってみた。
オバマ米大統領(53才)をはじめ、ノーベル賞受賞者などを多く輩出している世界トップレベルのハーバード大学を卒業したパックン。「就活する同級生が多かったんだけど、なんかつまらないなって思って。冒険のつもりで日本に来ることにしたんです」と、大学を卒業した22年前に来日。
当時は、学費のローンを返すために福井で英会話学校の講師になった。「あの時がいちばんお金がなかった。パンの耳を食べたり、友達の家でご飯を食べさせてもらったり、1日1食の生活でした」。返済にお金を全部回したいという強い意志を持ち、2年半で完済すると、夢である役者を目指し上京した。
「1996年から1年間役者をやりました。いろいろ仕事させてもらって、野際陽子さん(79才)ともキスできたんですよ! でも、でっかい役は回ってこなくて…」と不満じゃないけど、どこか晴れない役者生活。そんな時に出会ったのが、相方となるマックンだった。
「日本の間とか言葉遣いを勉強して、幅広い役を演じられるようになりたいと思いコンビを組みました。役者の勉強の一環としてマックンを踏み台にしてやっていこうとしたんです!」と照れ隠しなのか、冗談めかしてコンビ結成の秘話を教えてくれた。
そんな若手時代、「やっぱり食えなかった?」という質問をすると、意外な答えが返ってきた。
「モデル、エキストラ、DJ、声優、翻訳といろんなことをやっていたから食べていけました。逆にお笑いの仕事が増えるようになって、収入が減ったね…」
お笑い番組『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)でお笑い芸人としての知名度を上げ、情報番組『ジャスト』(TBS系)、英語トークバラエティー『英語でしゃべらナイト』(NHK総合)、情報番組『おもいッきりイイ!!テレビ』(日本テレビ系)などでキャリアを積み、コメンテーター、司会業とマルチな活躍を見せ、幅広い世代に顔を知られるようになった。
「ぼくの性格はとにかく飽きっぽい。同じことを朝、昼、晩やりたいと思わないし、とにかく毎日違うことをやりたい。このマルチな感じがちょうどいいんです」
毎日刺激があって楽しい――そんなふうに語るが、ハーバード大学を卒業したのにもかかわらず、日本へ、しかもお笑い芸人を志したことを母国の母親はどう思ったのか。
「芸人になるって初めて言った時、“あなたが? 友達のデリーくんのほうが面白いじゃん”って言われて…。でも、あなたの人生なんだから頑張って生きてって応援してもらっています。それよりも、ボケのひとつで“ハーバード卒ですから”と使っているので、大学関係者がぼくをどう思っているのか、そちらのほうが心配です!」
※女性セブン2015年4月23日号