巨人ファンならずとも2日遅れのエイプリル・フールだと思ったはずだ。4月3日の巨人のスタメンには、誰もが目を疑った。4番捕手・阿部慎之助。阿部が開幕7試合目にして“古巣”キャッチャーのポジションに戻ってしまったのである。
2月、宮崎キャンプを視察に訪れた野球評論家・金田正一氏に対し、原辰徳監督はこう語っていた。
「昨年秋の時点で新チームを組むときに、阿部の一塁コンバートがスタートラインになると思っていました。本人も納得しており、私は99%キャッチャーに戻す気はない」
あの決意をアッサリと反故にしてしまったのである。
原監督は阿部の捕手起用について「相川亮二の故障による緊急措置」と説明した。相川は4月2日の中日戦で走塁中に右足を痛め、大腿二頭筋肉離れの診断を受けて登録を抹消された。これを受けて、報道では「チームの緊急事態だから」と阿部自身が申し出て原監督が承諾し、捕手に戻ったとされている。
だが、相川が戦線離脱を余儀なくされたとはいえ、それが「1%の原因」になるとは思えない。ベンチには今季開幕戦でマスクを被った2年目の小林誠司や、ベテランの實松一成、さらには生え抜きの加藤健が控えているのだ。
この変節にOBの間からは意見が百出している。手厳しく叱咤したのは、巨人OBの広岡達朗氏だ。
「もう呆れて物もいえませんよ。こんなことになるんなら、そもそも阿部にファーストを守らせるべきじゃなかったんです。だから私はずっと反対していたんだ。
それにこのままマスクを被らせて10試合もすれば、またあそこが痛い、ここが痛いと言い始めるに決まっている。というか、いわないとおかしい。だってもともと阿部は首が痛い、膝や腰が悪いというからファーストにコンバートしたんでしょう。それがピンピンしているなら、痛いというのは仮病だったのかとなります。もうすべてが破綻してしまっているんですよ」
※週刊ポスト2015年4月24日号