日本人で唯一、今季メジャー初戦「マスターズ」(4月9~12日、米・オーガスタGC)に出場した松山英樹は、通算11アンダーの5位でフィニッシュ。2013年の「全英オープン」の6位を上回る、自身のメジャー最高順位となったが、大会が終わったその瞬間から、次なるメジャー大会の制覇へ向けてギアを入れ替えている。
メジャー優勝を目標にしてきた松山が最も勝てる可能性があるといわれていたのが「マスターズ」だった。
「今年の挑戦で、ローアマを取ったアマ時代から数えて4回目。この大会は毎回同じコースで、ピン位置もほとんど変わらないから、経験のある選手が有利なんです。それに加えて今年の松山は開幕以来、非常に安定したショットを見せており、大会前から期待値が非常に高い選手でした」(プロゴルファー・沼沢聖一氏)
安定感は数字に現われていた。松山は「平均飛距離」と「フェアウェイキープ率」の2つを組み合わせた、飛距離と方向性の良さを示す「トータルドライビング」という指標で全米1位。さらに昨年から導入され、ショット力を示すといわれる「ストローク・ゲインド・ティー・トゥ・グリーン」(*注)が3位という好記録をひっさげ、世界屈指のショットメーカーとして大会に臨んだ。
【*注/コースのグリーン以外からのショットがスコアにいかに貢献したかを示す数字。ショットのスコアに対する貢献度を表わす】
一方で課題だったのがパッティングである。
松山は「平均パット」(1.737)は23位と悪くないが、グリーン上でいかにパットがスコアに貢献したかを示す指標である「ストローク・ゲインド・パッティング」では113位と、ツアー平均を大きく下回っていた。ショットでチャンスを作りながら、グリーン上のパッティングでスコアを崩す傾向にあったのだ。
言い換えれば、パッティングの問題さえ解消すれば、松山はメジャー大会でも上位の常連になれる可能性を秘めた選手であることを示していた。前出の沼沢氏は、次に勝てる可能性のあるメジャーは「全米プロ」だと語る。
「直近では6月の全米オープンになりますが、毎年コースセッティングが厳しいことで知られる。次の7月の全英オープンは雨や風など天候に大きく左右される。その意味では全米プロが最も可能性が高い」
ただ今年の全米プロ開催コースは“奇才”ピート・ダイが設計した「ウィスリング・ストレイツ」(ウィスコンシン州)。このコースはあのタイガー・ウッズですら「速すぎる」と悲鳴を上げたグリーンが名物だ。
松山が今後どれくらいメジャーで勝てるかは、グリーンの上にかかっている。
※週刊ポスト2015年4月24日号