野球ファンの間で4月5日に行なわれた巨人-阪神戦が話題となっている。理由は試合内容ではなく、見ているほうがヒヤヒヤするほど噛み合わない実況席の様子だった。
この日、BS日テレで放送された中継は、実況を日本テレビ・辻岡義堂アナウンサー、解説を巨人OBの水野雄仁氏が担当した。
不穏な空気が流れ始めたのは3回表だった。鳥谷敬の大飛球を亀井義行が好捕。辻岡アナが「亀井のファインプレー!」と実況すると、水野氏がチクリ。
「まァ、亀井クラスの守備力だったらファインプレーだといってほしくないでしょうね」
辻岡アナは「あ、そうですか……」と意気消沈した。雲行きはさらに怪しくなっていく。6回裏、阿部慎之助の打席。この日まで調子の出ていなかった阿部について、水野氏が解説する。
水野「狙ってない球をタイミング崩されながら、対応してホームランが打てると超一流ですね」
辻岡「阿部はそれができるということですよね、本来ならば」
水野「(怒気を込めて)で、き、て、たッ」
辻岡「で、き、て、た。うーん」
水野「3年ぐらい前までは」
この打席ではまだ事件があった。
辻岡「(阿部は)今シーズンも3割30本……」
水野「(話を遮り、語気を強め)今のフォークですよ?」(注・辻岡アナの話の途中、阪神の藤浪晋太郎がフォークボールを投げ込んでいた)
辻岡「ええ」
水野「ピクリとも動かずに見逃せるバッターってそういないんですよ。辻岡さんには凄さはわからないと思いますけど」
辻岡「失礼いたしました」
その後、好投する巨人・高木勇人について解説した際も、水野氏は「これは辻岡さんがわからないレベル」とつけ加え、辻岡アナが返答に窮していた。
水野氏はなぜ怒ったような解説をしていたのか。確かに辻岡アナの不勉強が目立つ場面はあった。例えば藤浪が3バントに失敗したことに、「侍ジャパンのエースになるなら決めないといけないですよね」と発言。だが、国際試合は基本的にDH制で投手が打席に立つことはない。水野氏は呆れたような声で「DHでしょ?」と聞き返した。
試合開始直後には、辻岡アナが巨人先発の高木を「緊張しないタイプだと話していた」と紹介すると、水野氏は「ここ(放送席の意)で辻岡さんに何を聞かれるかわからない緊張感のほうがあります」と“キツ~い解説”を口にしていた。
不勉強な実況への怒りか、単にコンビ歴が浅くてぎこちなかっただけか。理由を水野氏に聞くと、「今回はノーコメントにさせてください」とのことだった。
次にこのコンビが中継する試合は、ワンサイドゲームでも楽しめそうだ。
※週刊ポスト2015年4月24日号